第8回日中韓繊維産業協力会議が中国・西安で開かれた。毎年、3カ国で持ち回る会議で、開催地はホスト国が決める。日本は第1回の横浜以降、大阪で2度、韓国は釜山、済州島で開いた。中国は北京、深圳に続いて今回、西安を選んだ。
西安はかつて長安といい、周、秦、漢、隋、唐といった代々の王朝の都として栄えた。二千数百年に及ぶ歴史があり、始皇帝の墓を守る兵馬俑(へいばよう)、三蔵法師がインドから持ち帰った経典を納めた大雁(だいがん)塔など有名な遺跡も残る。日本は遣隋使、遣唐使を当時最先端の都に送り、奈良の平城京、京都の平安京はいずれも長安を模して造られた。
経済大国となった現代の中国では沿海部の成長が先行したが、近年は内陸部でも開発投資やインフラ整備が積極的に行われ、西安もその恩恵を受ける。城壁に囲まれた旧市街は建築物の高さ制限を受けるが、城外は高層ビルが続き、人口1000万人を擁する巨大都市だ。
そして今、西安は中国の国家戦略における重要拠点として存在感を高めている。中国を起点に欧州まで結ぶシルクロード経済圏構想「一帯一路」の陸の拠点としてだ。日中韓繊維産業協力会議でも中国側の出席者から盛んに一帯一路の意義が強調されたという。歴史的な背景と今の役割を重ねてみると、この地を会場に選んだ理由も浮かび上がるようだ。