「新品を一から作るより、使用済みの商品を解体後に修理して組み立て直す方が難しい」と言われる紳士靴。千葉県柏市に50年以上前から工場を構える東立製靴は年間7万足超の紳士靴を修理している。顧客が20年、30年にわたり愛用した靴を修理に出すこともあり、作り手冥利(みょうり)に尽きるという。
そもそも同社の主力であるグッドイヤーウェルト製法は、すり減った底を交換するなどリペアを前提とした技術で高級靴にも多い技術。修理の工程での解体やつり込みなど難易度の高い手作業は熟練職人の腕の見せどころだ。
15年前にオリジナルブランド「ショーンハイト」を立ち上げた。グッドイヤーウェルト製法によるパターンオーダーの紳士靴で3万円台。リーズナブルなため、口コミでファンが増えている。百貨店でのオーダー受注会も盛況だ。
大量生産品を使い捨てするより、愛着のあるモノを長く大切に使い続けたいという消費者意識の変化にもマッチし、修理などアフターケアサービスが商品への信頼度の向上につながる。さらに自分好みのパーソナルな一足が作れるのも、顧客の視点に立った修理で積み重ねてきた技術が背景にある。熟練技の若手職人への継承にも力を入れている。アフターメンテナンスとカスタマイズは、紳士靴の未来を切り開くキーワードになりうる。