「結局のところ、人は多感な思春期に感動したデザインから逃れられない」。そんな意見を聞いたことがある。実際に自分の好きなものを振り返った時、70年代後半から80年代にかけてのパンクとロカビリーが混ざり合ったような「パンカビリー」のスタイルがあることに気づく。
70年代末のパンクの勃発とあっという間の崩壊の中で、パンクは様々な要素と混ざり合った。パンカビリーは、50年代イメージを取り入れたパンクスタイル。ロンドンのキングスロードにあった「ジョンソンズ」の服、「ジョージ・コックス」のラバーソールシューズなどが、その代表的なブランドだ。
近頃のコレクションでは、90年代の影響を指摘する声が聞かれる。90年代は、それ以前の様々な年代を取り入れていく傾向にあった。そのため、70年代や80年代ほどの明確なスタイルを規定しにくい。しいて言えば、スポーツミックスのストリートスタイルやミニマリズム、ネオンカラーのサイバーな要素といったものであろう。
とはいえ、90年代がちらほら見られるのには理由があるように感じている。それは、最近、頭角を現してきた若手デザイナーたちが思春期に感動したファッションが90年代だったから。そんな気がしてならない。やはり、人は多感な時期に感動したデザインから逃れられないのであろうか。