百貨店の数少ない成長領域が化粧品だ。全国百貨店の月別売上高は衣料品の低迷と対照的に化粧品がここ3年間、連続して前年同月実績を上回った。元々、強みがある商品領域だが、インバウンド(訪日外国人)だけでなく、20~30代の新規顧客の需要を取り込んだ。
引き続き改装投資の重点は同分野。伊勢丹新宿本店は18~19年度の大規模改装で化粧品売り場を拡大し、MD、接客サービス、環境を刷新する。都心、地方を問わない動きで、三越伊勢丹や阪急阪神百貨店は駅ビルや郊外SCの大型商業施設に同領域を切り取った編集型小型店の出店を本格化する。
ニューヨークでもサクスフィフスアベニュー本店が、2階のほぼ全て3000平方㍍を化粧品売り場に充てた。「百貨店にわざわざ行きたくなる」商品をはじめ、美の新しい体験ができる施術サービスに注力。ラグジュアリーコスメのスパルームを15カ所に配置した。
化粧品の面積を拡大するだけでは「時間をかけずに買いたい」「自分でもケアしたい」といった顧客ニーズの変化に対応できない。百貨店離れが著しいミレニアル世代に対して新しい体験型、ソリューション型のMD、サービスが欠かせない。化粧品で獲得した新規顧客が食品や衣料品の買い回りに結び付いていない現状だけに、問題は成長領域にとどまらない。