東京ではアジサイが美しい季節を迎えている。暦を見れば入梅まであと2週間ほどとなった。間もなく傘やレインコートが手放せなくなるだろう。
服はその土地の気候によって生まれるもの。そんなことを季節の節目にふと思い出す。20年ほど前に初めて訪れた初夏のベルギー・アントワープの専門店で、デザイナーブランドの地厚なモールスキンのコートが売られていた。初夏なのにこの素材感かといぶかしがっていると、午後に突然、雹(ひょう)が降ってきた。なるほど、この季節にしてこの服なのかと納得した記憶がある。
日本のデザイナーの海外進出が活発になっている。「昔ほど海外に出るハードルは高くない」とあるデザイナーは言う。他の国からも新人のデザイナーは登場するのだが、そのアイデアの面白さの一方でプロダクトクオリティーを懸念する声は少なくない。その点、日本のブランドのプロダクトクオリティーは各国のバイヤーにも伝わっている。
インターナショナル市場に向けてブランドを発信していくとなると、デザインの強さはもちろん必須のこと、クオリティーやMDも世界を意識する必要がある。ロシアから中東までの市場を考えれば、その気候の違いからこれまでとは違う品番も必要になろう。継続したビジネスを考えれば、相手の市場への理解は欠かせない。