ワコールの塚本能交会長が4月1日付で退任し、今月から同氏不在の役員会が行われることになる。社長が安原弘展氏(現会長)から伊東知康氏にバトンタッチされるタイミングに合わせての自然な人事であり、もちろんワコールホールディングスの社長は塚本さんが続投する。とはいえ、40年余りワコールの役員会の中心にいたことを思えば、一つの節目を感じる。
塚本さんが取締役になったのは77年。当時の売上高は666億円で、現在の約3分の1に過ぎなかった。既に韓国、台湾、タイなどに合弁会社はあったが、この年にニューヨーク事務所を開設し、本当の意味でのグローバル戦略がスタートした。
4月以降、役員会の雰囲気は変わるのかとの問いに、ある役員からは「そう変わらないと思うよ」との答え。もともと自由に発言できる雰囲気だからというのが大きな理由だ。言葉にしてしまえば簡単だが、大きな組織でありながら、自由闊達(かったつ)に議論できることは同社の強みの一つだろう。
一方で、4月2日の入社式には106人の若者が姿を見せた。塚本さんのあいさつは「新入社員の皆さんは変化する消費者を最も理解している存在。新しい道を作る人材になって下さい」。消費者や流通の激変、オムニチャネル戦略、新興国での拡販と課題は多いが、同社の新しい道に注目したい。