パリでは現在、ファッションデザイナーに関する様々な展覧会が開催されている。昨年秋にはパリ8区にイヴ・サンローラン美術館がオープンした。1月末からは、昨年急逝したアズディン・アライアをしのんで、マレ地区で回顧展が開かれている。
18~19年秋冬パリ・コレクションの期間中の3日からは、ガリエラ美術館でマルタン・マルジェラの回顧展も始まった。89年から09年までの作品を時系列で見られ、マルジェラ本人もその内容に関わったと聞く。まだデザイナーが健在で、しかも自らが創設したブランドを離れているにもかかわらず、自らのアーカイブを独自の視点で展示する試みが面白い。
マルタン・マルジェラといえば、過去にいくつものコンセプチュアルな展覧会を開いている。中でも異質だったのは、90年代半ばにロッテルダムの美術館で見たカビの展覧会。マルジェラの服を着たマネキンにカビの菌を付着させ、展示期間を経てそのカビがどう増殖していくのかを見るもの。マルジェラらしい時間軸と服との関係性を感じさせるものだった。
そのマルジェラのブランドは、今やジョン・ガリアーノが手がけることでマルジェラの概念を違う切り口から表現し始めている。マルジェラ本人は、今のブランドのありようをどう感じているのだろうか。