台湾の台南市に林百貨店という商業施設がある。32年に日本の実業家だった林方一氏が設立したものだ。第2次世界大戦後は倉庫や事務所に使われていたようだが、3年前に再び百貨店としてリニューアルオープンした。現在は文化財にも指定され、台南の人気スポットとしてにぎわっている。
5階建てのフロアは、台湾の特産品、雑貨、ファッション、書籍、レストランなどで構成され、レトロ感あふれる階段やエレベーターなども評判を集める。商品の大半は、現地ブランドで揃えられ、市内の高級百貨店とは、一味違った存在感だ。日本人観光客も多い。
先に発表された訪日外国人統計を見て、改めて感じたのが日台間の親密さ。総数は中国や韓国に次ぐ3位だが、台湾の人口から考えれば、ほぼ5人に1人が日本を訪れるという割合の高さだ。ちなみに中国本土客を同様に計算すれば20人に1人、韓国は7人に1人ぐらいになる。
インバウンド(訪日外国人)需要も「ブーム」どころか、今やファッション・小売業界も、これ抜きに考えられないほどのインパクトになってきた。林百貨店の屋上には戦時の空爆や銃撃の跡が残り、今も当時のままに保存されている。不幸な時代を乗り越えながら、良い関係を享受できる時代が来た。訪日客にも感謝しながら、さらなる往来を期待したい。