《めてみみ》哀悼アライア

2017/12/01 04:00 更新


パリ市立モード美術館で開かれたアズディン・アライアの回顧展(14年1月)より。(C)Paolo Roversi,2013

 アズディン・アライアが急逝したことに、深い悲しみを感じている。アライアはチュニジア生まれでイヴ・サンローランの下、「クリスチャン・ディオール」をはじめ数々のブランドを経て83年に「アズディン・アライア」を設立した。

 女性の身体を際立たせる構築的なカットは、一目見ただけでアライアのカットだと分かる。そんな唯一無二のクリエイションを続けてきた。彼がいつも、ミラノのセレクトショップ、10コルソコモの創業者のカルラソソッツァーニさんと一緒に「コムデギャルソン」のショーを見に来ていたことを思い出す。その死は、一つの時代の節目に感じられる。

 アライアの死去で気になるのは、ブランドの今後だ。ブランドを抱えるリシュモングループは、今後の事業方針を明らかにしていない。しかし、アライアぐらい独自のカットが確立されていると、もう他の誰かがデザインしても賛否が渦巻くことになるのは明らかだ。

 創業デザイナーが亡くなった後、そのブランドを引き継いで事業を進める。そんなビジネスが当たり前になった。しかし、創業デザイナーの個性が際立てば際立つほど、後任デザイナーのクリエイションに複雑な思いを持たざるを得ない。本当はやって欲しくない。そんな風に思うブランドもたくさんある。アライア以外に、アライアはできない。



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