《フレッシャーズの皆さんへ》“当たり前の暮らし”に彩りを

2020/04/01 06:30 更新


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 本日、繊維・ファッションビジネス業界の一員となられた皆さん、おめでとうございます。心から歓迎の言葉を贈ります。

 今、目の前に広がる光景は、就職活動をしていた頃とは随分と違うことでしょう。新型コロナウイルスの感染拡大の影響は終息が見通せず、世界的に緊張が高まり続けています。

 個々人に自粛が要請された街の中では、多くの商業施設が営業時間の短縮や休館に踏み切りました。ファッション商品を売る路面店でも、ほぼ同様の選択をしています。常ににぎわってきた街に人影がなくなり、静まり返った様子を前に不安な方も多いかもしれません。皆さんより先に社会へ出て仕事をしてきた私たちにとっても、初めての体験なのですから。

 日本より早くに自宅待機などの行動制限が厳しく求められた欧米では、ファッションビジネスは優先順位が低いとされ、多くのブランドが店を閉めました。しかし、その一方で、ラグジュアリーブランドグループが医療用マスクや防護服、消毒のためのアルコールジェルを作り始め、多額の寄付活動も連日のように発表しています。日本国内でも、衣料用の縫製工場がマスクの生産に切り替える動きが活発です。もともと日本の繊維業界には、抗菌などの高機能素材や優れた加工技術の蓄積があり、現在の対応を支えています。

 「不要不急とは何か」「自分たちには何ができるのか」――私たちは皆、様々な問いを抱えることになりました。すぐに正解が見つかるものではありませんが、それでも今回、改めて気づいたことも多いはずです。例えば、自分や家族の安全と仕事の重要性という点で異論は出ませんでした。多方面で自粛が呼びかけられ、判断が個々人や企業に委ねられた中で、家と仕事場のほかには近づかなくなっています。そうして街から人影が消えたわけですが、この生活は長く続けられません。私たちには、サードプレイス(第3の居場所)が必要だからです。人は社会的な生き物であり、家と仕事場だけで生きていけるものではありません。自分らしい居場所と同様に、自分らしくあるために欠かせないのが、衣料品であり、ファッションアイテムであり、一人ひとりのライフスタイルの充実です。

 繊維・ファッションビジネスはウイルスに対して最重要の産業ではありません。しかし、繊維・ファッション商品は単なるぜいたく品とも違います。世界中の一人ひとりの〝当たり前の暮らし〟を保つ役割があります。それぞれに大切な暮らしを支え、より彩り豊かにするための仕事です。平和でなければ、健全な発展のない産業と言われてきたのも、ここに理由があります。

 今は困難に直面していますが、下を向く必要はありません。世界的に見れば、繊維・ファッションビジネスは成長産業であることに変わりないからです。繊研新聞社は70年以上の歴史の中で、一度も欠号を出すことなく、新聞を発行してきました。今後も変わらず、「共感と解説」を掲げて皆さんとともに成長したいと考えています。人々の大切な暮らしの彩りを広げる仕事に自信を持ち、一緒に進んでいきましょう。


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