ロンドン在住20年の友人、ケイと娘のハナは、日本に着くとすぐに「メルカリ」のアプリを開く。丁寧な商品説明と画像もジャパンクオリティー。購入品は滞在する約10日の間に宿泊先へ届く。英国内と違って郵便は確実だし、円安も加わって日本でのEC購入はウキウキするらしい。
意外な使い方のわけ
メルカリは17年にイギリスでサービスを始めたが、翌年撤退した。人件費や広告宣伝費がかさみ、競合の多さも原因と見られた。
確かにそうかもしれない。大学生のハナの友人たちに近頃人気のショッピングサイトは中古品を扱う「Vinted」(ビンテッド)や「Depop」(デポップ)。買っては着て、また売るを繰り返すという。
もともと、イギリスでは「チャリティーショップ」が生活に根付く。だから中古品の購入に抵抗は少ないらしい。友達同士でこの手の店を巡るのも日常の一部。近年はこれらの店もECサイトを開設している。
知人のオランダ人、ゴースもメルカリと古着の愛用者。日本留学中のファッション好きな学生だ。メルカリは約10年前に自国で代理購買の「Buyee」(バイイー)経由で知った。
「コムデギャルソン」を安く買えるサイトを探していたのがきっかけだ。ヨーロッパからすれば貴重な日本ブランドのアーカイブが良好な状態で手に入るサイトは魅力的。最近メルカリで購入した服は、「ミルクボーイ」「エイプ」「アンダーカバー」など00年前後が全盛の日本ブランド。読めない日本語はグーグル翻訳にかけ写真でクオリティーを判断、安く入手する。
個人の〝観光資源〟
米リユース大手、スレッドアップのリポート(23年)によると、米国内で中古衣料を購入した成人消費者の63%がオンラインによるもの。そのうちZ世代とミレニアル世代は71%と、比率が高い。これは、世界にも通じる流れと見られる。
円安の今、訪日外国人は至る場所でお手頃になったジャパンクオリティーを目にしているだろう。ファッション分野でも、日本人デザイナーやメイド・イン・ジャパン、古着の目利き力など魅力はたくさんある。
オンライン上の〝個人資産〟も選択肢の一つになったのは上述の通り。今は翻訳エンジンも優秀だ。日本ならではの懇切丁寧なインターフェイスと商品の品質も高いオンラインサービスは、意外にも未開拓ではないか。ニッチな日本ブランドが好きな彼らにとってはうってつけのサービスだ。
ジャパンファッションの魅力を伝える手段の一つとして活用する価値があるのでは、と調べたら昨年秋から「メルカリショップス」で越境ECのサービスを始めていた。合点がいった。
(嘉村真由美=フリーランスエディター)