丸井織物と信州大学繊維学部は次世代人材の育成に向けた産学連携PBL(課題解決型授業)プロジェクトを発足し、11月30日に石川県中能登町の丸井織物本社で調印式を行った。来年4月から相互交流による実践教育をスタートし、包括的な取り組みへと広げていく。
今年8月、丸井織物がインターンシップの学生を受け入れた際に信州大の教員4人も同行し、同社の生産現場を体験した。これをきっかけに信州大から連携を呼びかけ、合意に至った。
調印式で森川英明繊維学部長は「当学部は日本で唯一の繊維学部で、繊維のこれからの可能性を信じて継続してきた。丸井織物さんは明るい社風で雰囲気がいい。大学も同じようにオープンに、志を同じくする人とやっていきたい。包括連携でまずは人材育成に取り組み、広く接点を持っていきたい」とあいさつした。
丸井織物の宮本徹会長は「当社は織りから染色、縫製などへも広げ、①衣料②非衣料③ITの3領域を柱に広げている。人の交流によって新しいことを生みだし、本当に実のある交流にしていきたい。繊維業界や産地のために気概を持って取り組みたい」と話した。
信州大の村上泰産学連携室長は「大学の教育、研究は変わっていかなければいけないが、丸井織物さんの生産現場に来ると『将来こうすればいい』という方向性が見える。PBLで繊維の本質を知れる基礎を作り、さらに高大接続のコンテンツへ広げたい」と抱負を語った。
すでに10月、感性工学科の授業で丸井織物が課題解決型授業を実施。機能性テキスタイルを使用した最終製品のアイデア出しや、授業後のフォローも行った。来年4月からは学部全体に広げた上で、希望する学生が丸井織物と倉庫精練を訪問し、IoT(モノのインターネット)を活用した織染一貫の物作りを体験する。
丸井織物には信州大繊維学部卒業生6人が在籍、活躍している。調印式には卒業生も同席、代表して杉本和也テキスタイル開発課長は「ミクロの状態を観察して成果につなげるという大学で学んだことを実践している。PBLでは教える側、教えられる側どちらもともに成長していきたい」と話した。