マルタン・マルジェラ本人が語るドキュメンタリーが、9月17日から公開される。「ドキュメンタリーを撮ることに同意する」という彼が手書きした小さなメモを手にしたのは、「ドリス・ヴァン・ノッテン――ファブリックと花を愛する男」の監督としても知られるライナー・ホルツェマーだ。
日本の足袋に着想を得たというシューズ「スプリットトウ」は、マルタン・マルジェラ初のコレクション、1989年春夏のショーで発表された。以降、その魅力は途絶えることなく進化を続け、メゾンの象徴的存在「Tabi」シリーズとしてグローバルかつタイムレスな輝きを放つ。奇想天外とも称したいほどに豊かな創造力、妥協のない仕事への姿勢、ファッションへの愛と情熱。だからこそメゾン20周年を機に彼は新たな人生へと旅立ったのだろう。突然の引退から10年以上経った今も、大きな影響力を持つ。
「僕の名前は作品と共に記憶されてほしい。顔じゃなくね」という哲学に従い、登場人物ではあるのだが、スクリーンに映し出されるのは彼のエレガントな手の表情や作品、そして語り口。それこそが彼本人なのである。縁ある人物たちのコメントも興味深い。
(ライフスタイルジャーナリスト・宇佐美浩子)