元モデルのマリエさん 廃材活用でアップサイクルラグ

2019/02/15 06:30 更新


 元モデルでファッションデザイナーのマリエさんは、18年から手掛けるアップサイクルラグ「ザ・レフト・オーバー・ラグ」(社名ヘル・オブ・ヘブン)で、27日までマクアケのクラウドファンディング(CF)を実施中だ。

 高級獣毛生地工場の端切れを編んで作る一点物で、生産段階で出る廃棄物を回収・活用する物作りに購入者が徐々に広がっている。CFで調達した資金は生産体制の整備に活用し、「新品の廃材を使う新しいモノの作られ方と買い方」への理解と共感を広げる。

(疋田優)

工場視察から生まれた

 ザ・レフト・オーバー・ラグの企画は、マリエさんが自身のブランド「パスカル・マリエ・デマレ」をデザイン・生産をする中で、国内の生地・縫製・プリント工場や職人などをチームで視察する活動から生まれた。渡六毛織からやむなく出る高級獣毛生地端のカッティング部分の提供を受け、マリエさん自身で編んでラグマット化に成功。一定量産できる体制も整えた。

 昨秋に自身のブランド初の期間限定店を三越銀座店で開き、ラグも約40枚ほど展示・販売したところ好評で、用意した分は完売。その後の卸向け展示会で100枚の注文が舞い込んだ。

 ただ、課題となったのが生産体制。都内の協力者の自宅を工場として利用し、1~5人で編み上げて1日の生産枚数はSサイズで3枚が限度。端切れの在庫が家中に積まれ、編み作業で原料くずも散る中、職人を増やし新たな作業場を借りて生産体制を整える必要が生まれ、支援を募った。

今までは廃棄されていた、獣毛生地をカットした端切れを生かす。カラートレンドが入っているのが特徴

「生産し続ける」が目標

 13日現在、マクアケでの支援者は約60人となり、目標の倍以上の金額が集まっている。ラグは1万9800~3万7800円。「一点物で、色柄も好みのものが手に入るかどうか分からない中で、大きな支援数になったと驚いている」とマリエさん。マクアケも「高単価のインテリアや家具分野は支援者を増やすにはハードルが高いが、期待値を超えた」(坊垣佳奈取締役ディレクター)という。ただ「大きな目標は生産し続けること、そして商品を納期までにしっかり提供することが大事」とマリエさんは目を輝かせる。

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マリエさんに聞く「同世代と共に成長したい」

デザイナーのマリエさん(左)とマクアケの坊垣取締役

 マリエさんはタレント、モデルとして活躍した後、NYのパーソンズ美術大学で1年間ファッションデザインを学び、17年からファッションデザイナーとして活動している。物作りにも携わる中で、今後のファッション消費に求められる物作りに関する思考やビジネスモデルに目を向ける。

 ──デザイナー活動について。

 米国で1年間ファッションデザインを学び、その後制服のOEM(相手先ブランドによる生産)に携わったりしましたが、17年からは自身のブランドを立ち上げ、代表でありデザイナーとして「本当に伝えたい、買ってほしいものの提供」をビジネスの核にしています。特に生地や生産背景を大事にし、生産者や職人に生産チーム全員で会いに行く全国ツアーを行っていて、みんなで生産現場を体感して、ワンランク上の物作りを追求しています。これがザ・レフト・オーバー・ラグにつながっています。

 ──不要品回収ではなく、新品の生産で出る廃棄物の新たな使い方を発信している。

 生産時の新品廃棄物を使うことを「新しい当たり前」にしたい。渡六毛織の廃棄する生地は、安く速くというファスト的な作り方をしていません。しかも高級獣毛使い。生産者も愛を込めて作っているのに捨てざるを得ないところに、「アイデアがある?」と渡されたんです。自分で編んでみて「できるな」となり、リベラルな考えで賛同してくれる編み手も集まった。

 でも、一番の悩みは「生産背景」。100枚の注文が急に入っても作れない。生産体制の整備とともに、ゆっくり作って需要に応える仕組みを、マクアケで作りたいと思っての挑戦です。

 今後は購入者だけでなく、様々な国内の工場から「廃棄物の活用」にもっと賛同を得られればと考えています。生産現場を回ると、職人が減って疲弊しているといった暗い部分ばかりが焦点になっていますが、私たち若い世代が働いていて、私たちの考えに賛同してくれる人がいますし、同世代とともに成長したい。今は女性も「生産背景が伝わること」を求めていますし、ただカワイイでは財布のひもは緩まなくなりました。背景を認識する人がもっと増えれば、モノの買い方も変わるはずです。



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