自社の強みを磨いた新事業で業容を拡大するメーカーがある。厳しい中でも手間のかかる物作りを続けたり、あえて縮小市場に参入したりと、こだわりの強さが目立つ。
(武田学)
真鍮(しんちゅう)製品メーカーの上白石(東京)は、売り上げが順調な企業の一つ。コロナ下で品質を重視する消費者の購買傾向も反映し、バッグやベルトの金具では、レトロでエレガントな質感の真鍮が人気だ。ラグジュアリーブランドをはじめ上質な商品の需要が伸びる一方、真鍮製品は機械化できず手間ひまがかかるため、国内メーカーは数少なくなっていた。欧州での真鍮パーツの確保が難しいうえ、「中国では調達できないため、真鍮パーツの確保に困っている様子」(上白石守社長)で、国内外の取引先が増えている。ただし、「当社の物作りや技術がまだまだ認知されていない」とし、SNSなどで情報発信を強める。デザインやアート性などを加味した物作りも進める。