【経験やスキルを生かすには】ルック「スマイソン」MD 出石朝美さん 仮説と検証で次の一手を

2026/09/18 05:30 更新NEW!


商社を介さず本国と直接やり取りしデザインチームとも意見を交わす出石さん

 ブランドや商品の価値を伝える、ファンをつかんでいくために、周りとのコミュニケーションを大事にしながら、経験やスキルを生かしている。環境変化やニーズの多様化に応じ、これまでの取り組みや雰囲気を変えることも必要だとして、面白みやモチベーションを力に奮闘している。

感覚だけに頼らない

 08年にルックに入社し、現在はD.C事業部スマイソン課で英「スマイソン」のMDを務める出石朝美さん。販売職からキャリアを始め、複数のインポートブランドで仕入れやMDを経験してきた。日本市場に合った商品構成を考え、本国と連携してブランドを育てている。

日本の需要を伝える

 入社後は約3年間、店舗で販売を担当した。もともとインポートブランドの仕事を希望しており、その考えを知る上司から総合職への転換試験を勧められ、4年目に転換した。

 その後、「ラペルラ」の立ち上げに加わり、仕入れを担当した。「トリーバーチ」ではレザーバッグやスモールレザーグッズを仕入れ、「レペット」では約7年間MDを務めた。

 インポートブランドを担当する中で感じたのが、売り上げとブランドらしさの両立の難しさだ。売れやすさを求めれば、デザインや価格は幅広い層に向けたものになりやすい。それに偏れば、本来のブランドの価値が伝わりにくくなる。売れる商品を作りながら、ブランドらしさをどう残すかを考えてきた。

 24年からスマイソンの日本事業の立ち上げに加わった。現在は商品の選定や販売計画を担い、日本で必要な商品を本国に提案する。商社を介さず本国と直接やり取りし、デザインチームとも意見を交わす。

 その一例が財布だ。立ち上げ時、本国ではキャッシュレス化を背景に財布を廃番にする方向だった一方、日本では需要が根強い。そこで店舗開設前に廃番だった2型を復刻し、新型2型を加えた。新型の一つが三つ折り財布だ。当時、他ブランドでは小型の三つ折りが売れ筋だったが、スマイソンにはなかった。日本側からサイズや機能を提案し、デザインは「スマイソンのエッセンスを入れてほしい」と本国に委ねた。本国も日本からの提案には柔軟で、「まずはアイデアをぶつけてほしい」との姿勢だ。そのうえで、実現できるかを検討する。

名古屋「ハエラ」にオープンした店舗

周りの意見も参考に

 商品選定では、自分の感覚だけに頼らないようにしているという。トリーバーチやレペットでは自身と近い世代が客層の中心で、自分が「可愛い」と思う商品に共感してもらえることも多かった。スマイソンは40~50代がコアで、価格帯も高く、百貨店では外商客との相性も良い。「自分の好みだけではなかなか当たるものは作れない」と話す。

 そこで積極的に意見を聞くのが百貨店のバイヤーだ。過去にスマイソンを扱い、同等以上の価格帯のレザーグッズを見てきた人に「今のスマイソンに何が足りないか」を聞き取る。店舗とのミーティングに参加することもある。

 出石さん自身が店頭に立ち、顧客と話すこともある。立ち上げ当初は、事業拡大には単価の高いレザーグッズを伸ばす必要があると考えていた。しかし、顧客と話す中でノートやダイアリーのファンの多さを実感。バイヤーの意見も踏まえ、ペーパー商品を事業の基盤として強化する考えを深めた。

 一方で、ペーパー商品を買う女性客をレザーグッズの購入につなげる方法も探っている。現在、販売スタッフを通じ、ノートやダイアリーの購入客が普段使う財布やバッグのブランドを調査している。傾向が見えれば、スマイソンの女性客と相性の良いレザーグッズなどを考える手掛かりにもなる。

 これまで担当したブランドでは、狙った商品がベストセラーとなり、「自分の考えていることと市場がマッチした」と手応えを得た経験もある。一方、売れると見込んで仕入れた商品が思うように動かず、責任を感じることもある。それでも仮説と検証を繰り返し、挑戦を続けている。

 「ブランドの旗振り役ではないけれど、日本市場でブランドを大きくしていく中心にいられる」と出石さん。自分で試したいことを形にし、その結果を基にチームで次の手を考えられるのが、今の仕事の面白さだ。

(繊研新聞本紙26年9月18日付)

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