ファッションウィークの公式スケジュールから離れて、独自の日程での新作発表が相次いでいる。中堅、若手のロンドン・デザイナーがデジタル形式で21~22年秋冬コレクションを披露した。
(ライター・益井祐)
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「JWアンダーソン」はメンズ/プレコレクションに続き、フォトグラファー、ユルゲン・テラーが撮り下ろしたポスターで新作を見せた。パンデミック以来定番になりつつある、デザイナー本人がコレクションと発表方法を語る動画を公開した。着想源となったのは、17年に自身がキュレーションをしたアート展。エキストラロングの袖を持つシャツは実はコンビネゾン、シルキーな素材がボディーのラインを強調する。その一方で陶器の花瓶のように下方にボリューム感のあるニットドレスで体やシルエットを探究した。
幾度となく登場したブランケットはアーティストのマグラデン・オドゥンド氏とジャワンダ・コーベット氏との協業で限定数のみのアートピースだ。作品だけでなく、本人たちもモデルとして参加している。
ディアナとローラ・ファニングの双子デザイナーが手掛ける「キコ・コスタディノフ」のレディスも発表された。60年代のレトロフューチャーや90年代にあったそのリバイバルをほうふつとさせる。オプティカルプリントのインスピレーションとなったのは、ポーランド人アーティスト、ヴォイチェフ・ファンゴール。ジャケットやスカートを包み込むスカーフは取り外し可能でスタイリングの幅を広げる。羽田元首相の省エネスーツを思わせるジャケットも、ボタン開閉で袖の長さを変える。得意のニットではトラディショナルなアランニットを細かくし、さらにカラフルなボーダー柄をのせることで新しい表情を与えた。
パリコレ終了後に新作を発表した「ステファン・クック」に目新しい物はない。しかしジェイク・バートとステファン・クックの2人は自分たちのシグネチャーを研ぎ澄ますことに集中した。一番目立っていたのはスカートのディテール。セパレートのようにも見えるがブルゾンやセーターの一部となる。ピーコートやステンカラーコートにアクセントを与える装飾は、包みボタンのようにも見えるが実は共布のバッジ。シープスキンが付け襟やバッグに使われる。デニムは主席だったセントラルセントマーティン美術大学の卒業コレクションを思い起こさせた。より洗練されたデザインは好印象。