レディス卸の活路② 次世代開発 強い専門店と切磋琢磨

2019/09/22 06:29 更新


 レディスアパレル7社の12年以降の各社別売上高推移(グラフ)では、減収傾向が顕著なのがわかる。とくに消費増税などの影響を受けた15年から16年にかけて大きく落ち込むところが目立つ。だがセモアは売り上げを伸ばし続け、ローブも大きな落ち込みを見せなかった。18年はセモアはじめ、ローブとブルーベルが増収した。

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持ち味伝える

 近年の専門店アンケート調査でのアパレルへの不満の1位は商品の同質化だが、数年前まではコミュニケーション不足がトップで、今も2位のままだ。店を見に来ないアパレルへの信頼は揺らぐ。ローブの足しげく店に赴く営業スタイルに、専門店は共感を抱いている。「切ることができないメーカー」として、取引を継続する理由の一つだ。

 セモアへの専門店からの評価は高い。よく聞かれるのは商品の価格と価値のバランスの良さだ。佐藤芳史社長は「売れる価格の設定を無視はしないが、企画・営業ともに良い素材を使いたいという思いが強く、原価率は他社より高いと思う」という。「企画とは日常的に情報共有し、プレッシャーを与えず、できるだけ自由に作らせる。そうすると毎回必ずチャレンジ品番が出てくる」。この基本動作が「もっとチャレンジした服を作ってほしい」という要望に応える結果を生むようだ。

 セモアの増収が続く最大要因は、キャリア向け「ディニテコリエ」の伸びにある。08年にデビューしたが、増収までには数年かかった。低迷にもあきらめず育て続けたのは、ディニテコリエは不特定多数に売る力があり、新規取引拡大のカギとなると確信していたからだ。これが実った今、また次世代向けの開発が必要と佐藤社長は考える。

 ブルーベルも次世代ブランド開発が実を結びつつある。16年にユーザーが高齢化していたセットアップ中心の「ブルーベル」を廃止、単品コーディネート型の「クチューム」を新設した。このクチュームが前期の増収に貢献した。


一新する勇気

 社名ブランドの廃止には、勇気が要る。事実、多くのブルーベル取引先は新ブランドを扱わず去った。しかし、短期間に新規で取り戻した。津田務社長は「顧客層を若くする必要があった。だがイメージが定着したブランドでは企画の一新は難しい」と話す。クチュームの効果は若返りだけでなく、優良な店に取引を絞ることでもあった。「価格志向は大資本に負ける。中小アパレルは品質志向を高めることが生きる道」との見立てが当たり始めた。

 18~19年の個人経営の婦人服店アンケート調査で、売り上げを伸ばした店の仕入れは全て完全買い取りだった。レディス卸は目利きに確信を持って仕入れる専門店との共生がカギ。強い専門店と切磋琢磨(せっさたくま)しながら、期待に応える商品開発力が必須だ。

(繊研新聞本紙19年7月30日付)



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