ベルリンのローカルクラブvs都市開発(宮沢香奈)

2020/02/11 06:00 更新


Medium griess

ここ数年、ベルリンのローカルクラブに関してあまり記事を書かなくなった。撮影禁止、取材も受け付けないというクラブやパーティーがほとんどであることや、そういった姿勢のもとに成り立っているクオリティーやプライバシーがあることを知れば、徐々に取材しようという考えも薄れていく。それよりも、いろんなレーベルやアーティストと交流を深めていきながら、もっと違った角度からベルリンのクラブカルチャーに注目するようになった。

そんなローカルクラブに関して久しぶりに記事を書こうと思ったのは、沢山の思い出が詰まった大好きなクラブ”Griessmuehle”が今年の2月でクローズしてしまうという悲報が入ったからである。

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実のところ、クローズする話は関係者からも随分前に聞いていた。しかし、当初ウワサになっていた10月や11月という話はいつしか話題にも上がらなくなり、これまでと変わらずレギュラーパーティーや単発のイベントが開催されていた。同時期に他のローカルクラブに関しても、新たな高速道路建設のため立ち退きを強いられるというニュースが舞い込んだが、こちらは大規模なデモパーティー”A100 Stoppen!”が開催され、一旦は沈静化したように思えた。

そういった背景から少し安心していたのだが、”Griessmuehle”に関してはついに2020年の2月までと発表されてしまったのだ。理由は、リース契約期間終了に伴う立ち退きである。様々なメディアで記事になっているのを探ってみると、どうやらクラブ側は延長を希望してにも関わらず、十分な話し合いもないまま現所有者である”SIAG Property II GmbH”から一方的に決定を下された模様。所有者は4年前に再開発のために買い取っており、そこから同クラブへは半年ごとにリース契約を更新してきたが、さっさと新しい施設に作り変えて新たなお金儲けをしたい側からすれば、実に邪魔な存在だったのだろう。

しかし、人気ローカルクラブを潰してまで一体何を作りたいのか?トップの人気を誇るゲイパーティー”Cocktail d'Amore”の集客を知っているのか?現状より商売繁盛となる勝算があるのか?あれほどハッピーオーラに溢れているパーティーが他にあるか?など、いろんな思いがフツフツと湧き上がってきたが、当事者でもない自分には分かるはずもなく、閉店のニュースが浮き彫りになるまで裏では実にいろんなことが起きていたようだ。

リース期間の延長が出来なくなった同クラブは、まず移転先の新しい土地が見つかっていない、レギュラーパーティーに関しても新しい開催先も見つかっていない、という状況に陥った。そんな状況下においても全く交渉に応じようとしない所有者への抗議運動が勃発したのは当然のことと言える。これこそがベルリンなのである。

こうゆう問題が勃発するとまず、”Club Commission“がホワイトナイトとして登場する。これは、ベルリンのクラブカルチャーを守るために発足された団体であり、日本でも講演を行ったことがある。彼らは、所有者への抗議はもちろん、署名活動、街頭演説、投資家からのフォローなどを行い、メディアへの多大なる影響力も持っている。

http://www.tagesschau.de/multimedia/video/video-650247.html

New York Timesの記事がこちら。

≫≫https://www.nytimes.com/2020/01/24/arts/music/griessmuehle-berlin-club-closures.html

そして、レギュラーパーティーの主催者、アーティスト、関係者、メディアが一丸となって署名活動を行い、私たちのような1オーディエンスに届き、そこからまたSNS上で拡散されていく。そういった一連の流れから、本来であれば11月で立ち退き命令が下っていたところ、2月まで延長されることが決定し、現在、ファンや関係者へ向けた盛大なフィナーレパーティーが続々と開催&発表されている。

立ち退きこそ回避出来なそうなことは非常に残念であるが、こういった活動は世界へと広がり、今後も勃発するであろう同じような問題への対策になっていくことだろう。そして、”Griessmuehle”からは、きっとまたいつか別の場所で”グランドオープニング”のお知らせが舞い込んでくることを心から願っている。素晴らしい思い出をありがとう。


長野県生まれ。文化服装学院ファッションビジネス科卒業。

セレクトショップのプレス、ブランドディレクターなどを経たのち、フリーランスとしてPR事業をスタートさせる。ファッションと音楽の二本を柱に独自のスタイルで実績を積みながら、ライターとしても執筆活動を開始する。ヨーロッパのフェスやローカルカルチャーの取材を行うなど海外へと活動の幅を広げ、2014年には東京からベルリンへと拠点を移す。現在、多くの媒体にて連載を持ち、ベルリンをはじめとするヨーロッパ各地の現地情報を伝えている。主な媒体に、Qetic、VOGUE、men’sFUDGE、繊研新聞、WWD Beautyなどがある。

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