リメイクシャツ”After March”との出会い(宮沢香奈)

2019/11/19 06:00 更新


ファッションにおける”リメイク”はいつの時代にも存在し、トレンドにもそれほど左右されず、独自の確立されたシーンを築いている。海外においては、やはり古着のリメイクと言うとLAを中心としたアメリカの印象が強く、もともと古着好きの私的にもセンスの良い”アメカジ”のリメイクは大好きである。アメカジとは全く異なるけれど、最近、ベルリンで出会ったステキな女性が手掛けているリメイクブランド”After March”と出会った。先日開催されたPOP-UPに招待してもらったので、その様子と共にブランド紹介したいと思う。


“After March”はベルリン在住のApril von Stauffenbergによるシャツのリメイクをメインとしたブランドで、セカンドハンドショップやヴィンテージショップで見つけてきたシャツをケープのように着れるように、袖の中間にホールを開けたり、切った袖からフリルを作ったり、ギャザーにしたりと様々。カラフルなステッチがあしらわれたもの、柄物のパイピングが付いてるもの、ユニークなメッセージや落書きのようなキッチュなイラスト、ブランドネームのスタンプなど、全てデザイナーのアイデアのもと一点一点手作業によって作られている。

もともと長袖だったものをカットして、フリル付きのパフスリーブにリメイクしたデザイン

もともと長袖だったものをカットして、フリル付きのパフスリーブにリメイクしたデザイン

リメイクのボディーとなるシャツはなんでも良いわけではなく、バーバリーやトミー・フィルフィガーと言った著名ブランドや老舗のシャツメーカー、さらに状態が非常に良く、100%コットンのみを選んでいる。元のシャツのデザインからリメイクアイデアを出し、あえて不揃いに縫ったステッチや思わずクスっと笑ってしまう遊び心満載のアイデアが豊富で、見ているだけでも楽しい気分にさせてくれる。同じシャツ、同じデザインのものはなく、全て1点ものとなっているため、お気に入りの一枚を見つける宝探しのような楽しさがあるのも良い。



デザイナーのAprilさんは、VOGUEをはじめとする多くのファッション媒体でインタビューや彼女自身のスタイルが取り上げられているファッショニスタでもあり、ジャーナリストでもある。リメイクはアイデア勝負な部分があると思うが、もともとセンスの良い人から生み出されるアイデアは、その人自身が反映されることもあって、それだけで説得力があると言える。

「After March」オフィシャルサイトから転載

≫≫インタビューはこちら

デザイナーでジャーナリストのApril von Stauffenbergさん。この日着用しているスカートにも自身によるドローイングが施されていた。

オフィシャルサイト、オンラインショップ、ルックやビジュアルと言った”見せ方”も当然心得ていて、モードファッションにポップアートをミックスさせたようなスタイリッシュさで目を引く。リメイクと言った概念だけでなく、”After March”が提案するオシャレで楽しい、そして、個性的なエコ活動であると思った。同ブランドでは、カラフルな着物の帯をスマホのストラップにリメイクしたアイテムも販売している。次にどんなアイデアが誕生するのか非常に楽しみである。


ちなみに、この日ケータリングで提供されたウォッカカクテルは、Aprilさんの旦那さんが手掛ける”Stauffenberg Edelbrand”

こんな上品なウォッカをベルリンで初めて飲んだ!というぐらい美味しくて、思わず、仕事を忘れて飲み過ぎてしまいそうになった。

ベルリンは”貧しい街”という発想はもはや過去の産物であり、ファッションシティーと呼ぶには程遠いけれど、裕福でセンスの良いビジネスを成功させている人たちは山ほどいるのである。今後この街はもっとそう言った傾向になっていくだろうと実感した夜でもあった。



長野県生まれ。文化服装学院ファッションビジネス科卒業。

セレクトショップのプレス、ブランドディレクターなどを経たのち、フリーランスとしてPR事業をスタートさせる。ファッションと音楽の二本を柱に独自のスタイルで実績を積みながら、ライターとしても執筆活動を開始する。ヨーロッパのフェスやローカルカルチャーの取材を行うなど海外へと活動の幅を広げ、2014年には東京からベルリンへと拠点を移す。現在、多くの媒体にて連載を持ち、ベルリンをはじめとするヨーロッパ各地の現地情報を伝えている。主な媒体に、Qetic、VOGUE、men’sFUDGE、繊研新聞、WWD Beautyなどがある。



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