インフレはいつまで続くのか?ドイツの厳しい現状(宮沢香奈)

2022/10/28 06:00 更新


ドイツが1951年以来の高いインフレ率を記録している。このようなニュースがいろんなメディアで飛び交い、実際、私たちの生活にも影響を与えている。中でも最も高騰したのが天然ガスだ。現時点ですでに3倍以上も上昇している。それ以外にも、電気代、石油製品、これまで高いと感じたことのなかった食料品までもが22.3%という値上がりを記録している。ドイツの主要メディア「ターゲス・シュピーゲル」によれば、バターの価格が前年同期比で49%、食肉は19%、パンは17%、ビールは7%上昇したとのこと。

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24時間営業の「Kneipe(クナイぺ)」(酒場や居酒屋を意味する)では、0.5リットルの生ビールが3ユーロ(約440円)とまだまだ良心的だが、今後は分からない。
セカンドハンドショップやヴィンテージショップを見て回る限り、大幅な値上げは感じられなかったが、衣類や靴なども上昇傾向にあるとのこと。

もっと、身近な例をあげて分かりやすく説明すると、まず、ベルリンのファーストフードを代表するケバブサンドが現在6ユーロ(約880円)と、8年前には3ユーロだったケバブは倍の値段になったことに思わず言葉を失った。もはや気軽に食べれる安価のファーストフードではなくなってしまった。

ベルリンが発祥の地とされるドネルケバブサンド

ベルリンでも大人気のラーメンにおいては、プレンツラウアーベルクに位置するとある日本食レストランで、豚骨ラーメンが15.9ユーロ(約2,300円)、キリン生ビールが6ユーロだった。これが日本だったら同額で何が食べれるだろうか?と考え込んでしまった。ベルリンでは、10月より最低賃金が値上がりをしたこともあり、それに伴い飲食店が値上がりしたことも考えられる。

2,000円を超える豚骨ラーメンはもはや贅沢品?
ミッテ地区に位置するオシャレな最先端レストランでは、シーザーサラダが10ユーロ(1,470円)

しかし、この70年振りの物価高騰の背景には、ロシアのウクライナ侵攻による影響があげられる。ようやく収束したコロナ禍から景気回復するために石炭や液化天然ガスの需要が世界的に高まり、価格が高騰、そこへ、ウクライナ情勢の緊迫化が加わり、エネルギー問題に拍車をかけているのだ。

しかもドイツは、天然ガスの55%をロシアからの供給に頼っていたこともあり、欧州内で最も影響を受けていると言われている。最近では、フランスから供給を得たり、将来的にはロシアからの供給に頼ることをやめるなど目標に掲げているが、これから一体どうなってしまうのか?


ベルリンの紅葉の季節はとても美しく、晴れの日にはオープンテラスが混雑する。物価上昇に関わらず盛況。

ここまでの情報は、ベルリナーなら国籍関係なく同じ状況だが、私のような日本円を主な収入源としている外貨生活の人間にとっては円安が更なる問題となっている。10月21日現在の為替レートは、1ユーロ=147円!!いつ150円台に突入してもおかしくない状態が続いている。そんな状況下での高インフレは大損をしているとしか言いようがない。

ありがたいことに仕事の依頼が減っているわけではない。そのことに感謝しながら、ユーロでの仕事を増やし、効率よくこなしていくことで現状を乗り切るしかない。

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長野県生まれ。文化服装学院ファッションビジネス科卒業。

セレクトショップのプレス、ブランドディレクターなどを経たのち、フリーランスとしてPR事業をスタートさせる。ファッションと音楽の二本を柱に独自のスタイルで実績を積みながら、ライターとしても執筆活動を開始する。ヨーロッパのフェスやローカルカルチャーの取材を行うなど海外へと活動の幅を広げ、2014年には東京からベルリンへと拠点を移す。現在、多くの媒体にて連載を持ち、ベルリンをはじめとするヨーロッパ各地の現地情報を伝えている。主な媒体に、Qetic、VOGUE、men’sFUDGE、繊研新聞、WWD Beautyなどがある。



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