第72回カンヌ国際映画祭で、圧倒的男性上位の映画産業界において男女平等を目標に掲げる「ウーマン・イン・モーション」が、仏ケリンググループと同映画祭の主催で開かれた。
(カンヌ=松井孝予通信員)
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「グッチ」「サンローラン」「バレンシアガ」など13のラグジュアリーブランドを有する仏ケリンググループは、サステイナブル(持続可能)を経営理念とする。「協業」をその柱の一つとし、職務における男女平等、福利厚生の向上をはじめ企業内外での社会的インパクトを推進している。
「アワード」と「トーク」
同グループは15年、カンヌ映画祭のオフィシャルパートナーとして、映画産業における男女平等実現を目的に二つのプログラムで構成するプラットフォーム、ウーマン・イン・モーションを発足。一つは映画産業に貢献してきた女性、また若き才能ある女性映画監督に贈られる「アワード」。
もう一つは作品における表現や映画産業全体での女性の現状について著名人らが意見を交換する「トーク」だ。これまで50を超えるトークに70人以上が参加し、変革への意識を向上させてきた。ウーマン・イン・モーションは今や映画にとどまらず、文化・芸術へと分野を拡大し、世界中で展開されている。
ポッドキャストも
ケリングのフランソワアンリ・ピノー会長兼CEO(最高経営責任者)は、今年5回目を迎えたウーマン・イン・モーションを「極めて重要な節目」とし、カンヌ映画祭と今後5年間の契約延長に署名。「男女平等実現に向け、それに必要な改革に貢献し長期的に取り組んでいくことを誇りに思う」と意欲を表した。
新プロジェクトとして、南カリフォルニア大学准教授のステイシー・L・スミス氏と映画・メディアにおける描写をテーマに共同研究を進めていく。またウーマン・イン・モーションのポッドキャストシリーズを立ち上げた。
今年のトークには、昨年のカンヌ映画祭で審査委員賞を獲得したレバノンのナディーン・ラバキー監督、女優兼プロデューサーのエバ・ロンゴリア、中国人女優チョウ・ドンユィ、そしてトランスジェンダーモデルのレイナ・ブルームが参加した。それぞれ自身の体験談から、女性の未来像をポジティブに語った。
円卓会議で意見交わす
エンターテインメントのエコシステムに領域を広げたトーク初の円卓会議では、女性進出を阻む諸問題を中心に鋭い意見が交わされ、聴衆の深い共感を得た。
「ウーマン・イン・モーション」アワード受賞者は、女優のコン・リー。カンヌで93年パルムドールを獲得したチェン・カイコー監督「さらば、わが愛」での名演技をはじめ、常に芯の強い女性の役で中国人女優として初めて数々の国際映画祭で成功を収めてきた。
ヤング・タレント・アワードはドイツ人監督エバ・トロビッシュの、力強く生きる現代女性を描いた「オール・グッド」が受賞。彼女には次回作の制作資金として5万 ユーロ が贈られた。