環境と社会課題に対するソリューションを掲げた企業が集結する大型イベント「チェンジナウ・サミット」が、パリのグラン・パレで3日間にわたり開かれた。仏ケリングは、ラグジュアリー分野に革新をもたらすスタートアップを支援する「ケリング・ジェネレーション・アワード」のブースを設け、日本で初開催した同アワードの上位3社が参加した。
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1位のファーメンステーションは、食品廃棄物を機能性バイオ素材へと転換する発酵技術を核に、持続可能な食と香りの分野への展開を目指している。米ぬかの発酵から生まれるMSG(うま味成分)やラクトースフリー素材の提案に加え、各種フレーバーによる美食市場へのアプローチも視野に入れる。香水分野では、ケリング・ビューティー部門での採用に期待がかかる。またワイン副産物など現地原料の活用も強みだ。

2位のアンフィコは、有害物質を使用しない無水着色と防水性を備えた2種の高機能テキスタイルを提案した。ケリングからは、アパレル市場に新たな色の基準を持ち込んだ無水着色が評価された。同社の技術は、6色の原着糸を使い1000~2000色を高精度の計算システムでシミュレーションできる。従来の大量用途中心だった原着素材を、アパレルの小ロットにも対応可能にし、コスト面では5000メートル超から優位性が出ると見込む。この出展を機に日本の物作りを軸にしつつプルミエール・ヴィジョンをはじめパリでの存在感を高め、ファッション市場への拡大を図る。

3位のアルガルバイオは、東大発の研究から生まれた藻類ライブラリーと二酸化炭素固定機能に優れた培養技術を背景に、ウェルネス、食糧、環境の分野での素材開発に取り組む研究型バイオベンチャー。現地生産・利用に向けた循環型モデルも描く。ブースでは藻類由来の顔料を用いたタイルや漆職人との協業作品を披露し、原料の新たな可能性を示した。欧州化粧品市場での実績を土台に、付加価値の高い原料開発による機能性スキンケアや顔料などでラグジュアリー市場におけるビジネスチャンスを探る。

(パリ=松井孝予通信員)