ミレニアル世代が教えてくれること(浅沼小優)

2015/03/06 17:35 更新


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■未来を先取りするバーバリー

「バーバリー本社の社員の70%は30歳以下」という話を聞いたのは、たしか2013年のこと。会社を歩く従業員の7割が10代と20代という状況を想像してちょっとした衝撃を覚えました。

驚きついでに日本の就業人口の比率をみてみたら、完全に逆転していました。30歳以上が74%という状況です。ご存じのように、バーバリーはものづくりに徹してきた老舗の会社です。特に日本の状況に慣れた目から見ると、バーバリーの社員構成はかなり特殊なものに見えてきます。

なぜバーバリーにはこれほど若年層が多いのか。とりわけこうした年代構成が企業のブランドイメージにどのような影響を与えているのか。とても関心を誘われます。

 

 

 

2013年に30歳以下というと、ミレニアル世代とも呼ばれるひとたちです。定義によって数年の差はあるのですが、だいたい1982年ごろから2000年ごろまでに生まれたジェネレーションに当たります。ジェネレーションYと重なる年代でもあります。

特徴としてすぐに思い浮かぶのが、彼らが現代のビジネスに欠かせないデジタルスキルに長けているということ。言い換えれば、彼らはイノベーションにオープンなのです。しかし、バーバリーが彼らを重視する理由はそれだけではないようです。

少し回り道になりますが、まず、ミレニアム世代とそれ以下の年代が世界の労働人口に占める割合について調べてみました。US Census BureauやVICE Mediaが試算したデータによると、今年2015年には彼らは世界の労働人口の約50%占めることになります。10年後の2025年にはいずれのデータでも7割前後となることが示されています。つまり、バーバリーは10年後の労働人口構成を先取りしている、と言えるわけです。

次に、働き手とはアクティブな消費者だという考えに立ってみると、ミレニアム世代の世界人口が20億人、彼らの購買力は2015年に2兆4500億ドルに達するといわれているので、かなりのインパクトです。ちなみに、日本におけるミレニアル世代は2013年現在、およそ2,400万人で人口のおよそ19%。米国では8,400万人、中国では2億人、英国では1,600万人がこの世代に属しています。

加えて、消費動向分析の分野では、ミレニアル世代は他の世代に対して文化的な影響力をもつ世代だとも言われています。こうした分析結果を承知した上でのことかと思われますが、バーバリーでは、ミレニアル世代の社員が直接マネジメントとコミュニケーションできるよう、イノベーションカウンシルを毎月開催しているとか。これはCEOのクリストファー・ベイリーの考え方でもあるようです。ミレニアル世代が与える嗜好と市場規模の影響、両面を重視する姿勢が見てとれます。




 ■ミレニアル世代の特徴

ミレニアル世代のスピリットが世界のこれからの消費とビジネスの未来を左右するととらえるバーバリーの姿勢はとても刺激的です。今後、世界的に影響力が高まると言われる彼らの考え方を知っておくことはとても有益でしょう。そこで、昨年10月にWGSNが発行した「子を持つミレニアル世代」というリポートを参考に、ミレニアル世代の意識や消費感覚について考えてみたいと思います。以下、WGSNのリポートが挙げる特徴のいくつかです。

 危機意識が強い

ミレニアル世代の成育過程はある種ユニークです。世界的な不況の中、雇用危機や住宅危機の影響を受けて育ちました。リスクに対するアンテナが働くのか、ものごとを冷静にじっくりと判断します。前のジェネレーションよりも結婚、出産、マイホーム購入にいたる時間が長いともいわれています。そして、この冷静さは政治や社会倫理にも向けられます。

意見表明をする

デジタルメディアやツールの登場とも関係しますが、親の世代よりも自分たちを取り囲んでいる状況に対する客観的視点が容易に入手できるようになりました。社会に強い関心をもち、それにたいして恐れずにはっきりと意見を主張する、という点に特徴があります。

リスク回避の裏返しともいえますが、子どもの未来についての責任感と危機意識がこれまで以上に強く、企業に対して透明性をもとめ、また、それを行動で示します。

社会に対する意識もスタイルのうち

彼らにとってかっこよさを構成する要素として、ファッションのみならずライフスタイルの重要性が増しているのは周知のとおりです。政治との関わり方、共同体への意識を含めてスタイルとして認識します。そのため、ポジティブな社会的メッセージや健全な倫理観を掲げるブランド、ビジネス、活動をサポートします。

BabyCenterが米国の2都市で行った2013年の調査結果からは、ブランドの社会的責任の重要性に対するミレニアム世代の意識はX世代よりも12%高いと示されました。

 

 

 

ソーシャルネットワークは所与のもの

不況の中で育つという経験をした世代は珍しくないかもしれません。ですが、以前まったくなかった状況がミレニアル世代で発生しました。それは彼らの特徴としてすぐに思い浮かぶ、「ものごころついたときからデジタル機器にふれ、ソーシャルネットワークを所与のものとして育った」という経験です。

SNSを通した発言が活発になり、つながること、共有することになんのためらいもありません。あまりにも当たり前すぎて、これらがかつてない特殊な環境だと指摘することすら、ミレニアム世代にとっては違和感があるのではないでしょうか。

前世代との心理的距離が大きい

いずれにせよ、それまでの世代と違ったコミュニケーションの回路を幼いころから開いて成長した。これは、同じ国、場所であったとしても前世代と生育環境がまるで違うとすら言えるかもしれません。それが思考に影響したとしても、また親以前の世代との間にこれまでの世代間ギャップ以上の違いを生じさせたとしても不思議はありません。情報収集とそのシェアの場や能力をもったジェネレーション。親になったときの子育てスタイルにも変化がうまれるはずです。

性別役割分担の意識が薄らいでいる

親以前の世代との価値観の違いは、父親は子どもに対して金銭面のサポートを、母親は感情面のサポートを、というプレッシャーにとらわれない状況を生みだしています。子育てを共同責任ととらえる動きは明確です。北欧の先進的な子育てスタイルが生んだ「ラテパパ」カルチャーに代表されるように、仕事を続ける母親が出かけている間に子どもの面倒をみる父親への違和感は薄れてきました。

2015年4月から男女共同育児休暇制度を施行する英国で、このラテパパが影響力の高い重要な人口集団になるとリポートで示されています。少し前に注目された、裕福で若く魅力的な「ヤミーマミー」と呼ばれる、すべてをもった完璧な母親像は影をひそめ、より自然体でいることを重視します。

どのような役割を担うか、フェミニズム的な問題ととらえていないようです。必死で自立を守る姿にも、典型的な母親イメージ像にも共感していない様子がうかがえます。広告で「ママ」という言葉を使うことのウケが悪くなっているとか。興味深い点です。

ユースカルチャーと関わり続ける

慎重さと冷静さの結果、独身の若者として長い時間をすごしたミレニアル世代。旅行、アートやカルチャー、音楽フェスとの関わりなど、いわゆるノマド的な、ユースカルチャーに代表されるライフスタイルが身体化されています。

サンフランシスコ発祥のAirbnbやNYに本社を構えるKids & Coe、ポートランドからスタートしたAce Hotelsは、家族向けにスタイルのあるレンタルスペースやアートを楽しむ旅行を提供し反響を呼んでいます。なかでもAirbnbはいまや190カ国以上への展開をみせています。

以上、主に米国や欧州に住むこの世代の動向について、記事からいくつかピックアップしてみましたが、これらをあえて三つの特徴軸にまとめてみれば、まず、彼らの政治的関心がとても高いこと、次に、彼らの生き方が自分たちより前の世代に対して明確に心理的距離を置いたものであること、三つめに、ユースカルチャーと縁を切らないライフスタイル傾向が継続していることがいえるのではないでしょうか。

 

 

 

■標準型から解放されてみる

昨年末、社会デザイン学会が開催した「こどもと社会デザイン」というテーマの集まりに参加しました。ハフィントンポストで大きな話題となった境治さんをはじめ、パネラーのひとたちが少子化問題についてディスカッションしていました。

そこで出された意見のひとつは「ひとりでも産み育てられる状態をつくることが結果的にこどもを増やすだろう」というものです。これは、私たちがこれまで生きてきた社会常識から見れば、典型的でも標準型でもない発想かもしれません。

でも、過去の選択の結果が今日だとしたら、それが作り上げた標準型から解放されない限り新しい未来は開けてこないのかもしれません。標準型でもそうでなくても、より生きやすいほうがいいじゃない、という発想はいま確実に求められているような気がしてなりません。

自己顕示欲が強いともいわれるミレニアル世代ですが、それは自分のためだけの主張ではなさそうです。標準型に自然と距離を置き、リラックスしながらもよりよく生きようと社会にコミットする。消費者像をはじめ、未来は案外身近なミレニアル世代が教えてくれるのかもしれません。




短期的なトレンドにすこし距離をおきながら、社会の関心がどこに向かっているのか考えてみるブログです。 あさぬま・こゆう クリエイティブ業界のトレンド予測情報を提供するWGSN Limited (本社英国ロンドン) 日本支局に在籍し、日本国内の契約企業に消費者動向を発信。社会デザイン学会、モード?ファッション研究会所属。消費論、欲望論などを研究する。

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