【記者の目】広がるメンズコスメ市場 SNSで美容意識向上、ライフスタイル提案に導入も

2022/02/14 06:28 更新


 メンズコスメ(男性用化粧品)市場が元気だ。特に伸びがいいのが20、30代を中心とする若い層の需要で、国内外の新興ブランドが急増している。EC市場が先行し、実店舗での売り場も徐々に増えている状況だ。今後も伸び続けていくことは確実と見られ、既存販路だけでなく、生活提案の一環として導入する企業が増える可能性も高まりそうだ。

コロナ前から伸び

 メンズコスメが伸びているのは、コロナ下でオンラインコミュニケーションが増え顔写りを気にする人が増えたこと、SNSやユーチューブなどで自分の見栄えを良くしたいというニーズなどが影響しているようだ。富士経済の調査によると20年のメンズコスメの市場規模は1507億円で、21年は1571億円を見込んでいる。市場としてはコロナ禍以前から伸びており、キャンプやゴルフ、バイクなどコロナで密を避けるために浮上した需要とは異なる。

メンズコスメの品揃えを充実させてきたロフト

 マスク着用によりシェービング需要が縮小する一方で、整肌料(スキンケア、メイクアップ)が20年は前年比8.9%増と大きく伸びている。21年はスキンケア、メイクアップに加え、メンズスタイリング剤(整髪料)が回復に向かい、伸びを想定している。

 けん引しているのが10~30代の若年層。特に関心を高める情報源となっているのがSNSだ。商品知識を深めている人も多く、ある程度の品質を求めるニーズが増えている。購入は主としてECで、情報収集から購入までオンラインで済ませる市場になっている。

 実店舗市場も拡大している。同世代に人気なのは1000~2000円の中価格帯といわれるゾーンで、ロフトが早くから売り場整備に取り組んできたほか、最近ではドラッグストアも1000円以上の品揃えを強める動きが目立ってきた。アインズ&トルペなどの女性向けコスメショップもメンズを導入し始めている。特徴は、以前は爽快感などある程度の刺激が求められていたのに対して、保湿力や低刺激などが選択ポイントになっていること。肌に付けた後の効果、使用感が決め手で、需要の変化がうかがえる。

 インテージの全国消費者パネル調査(集計期間は15~19年)によると、基礎化粧品(スキンケア)の購入は10代の66%、20代の55%が女性用を購入している結果となった。男性のコスメに対するニーズと従来の男性用化粧品とのずれが生じ、女性向けに近づいていると思われる。女性用の情報量や商品バリエーションの多さも反映していると見られている。同調査によると40~60代の男性の男性用化粧品の購入率が特に上昇している。スキンケアを始める人が増えてきたとの見方だ。

 しかし20年以降は、メンズコスメの新興メーカーが増え、需要の変化を後追いして開発商品が急増している。新たな需要に対応した商品が増え、メンズコスメの情報発信も豊富になってきたことなどから活気づいている。ただインテージの調査によると10、20代の女性用化粧品購入率は引き続き上がっている。

需要掘り起こしを

 最近はメイクアップやフレグランス、ネイルの需要の伸びも目立っており、若い層にスキンケアに関心を持つ潜在需要がかなりあると見られている。また、40代以上もSNS利用が増え、百貨店をはじめ実店舗でのメンズコスメの扱いも増えていることから需要増に波及していくことは確実だ。矢野経済研究所によると、20年度の国内化粧品市場規模(メーカー出荷ベース)は2兆2350億円(前年度比15.6%減)で、そのうち男性用化粧品の構成比はまだわずか5.4%。伸び代はかなりありそうだ。単なる美容意識が高まってきただけでなく、コロナ禍も踏まえて、より快適で心地良く健康的に暮らしたいというライフスタイルの向上を求めているとも言えそうだ。

 こうしたなか、異業種小売業でライフスタイル提案の一環としてメンズコスメの導入を検討するところも出てきている。メンズ雑貨の「コレクターズ」(ヌーヴ・エイ)が今秋にメンズコスメを一部店舗に導入した。最近、ラグジュアリーブランドもコスメのメンズラインを出し始めたが、アパレル系などの店舗もメンズコスメの展開を検討する動きが出ているという。

メンズコスメの新興ブランドが成長(「ザ・フューチャー」)

 メンズコスメ市場が今後も拡大していくのはほぼ確実と見られ、ECやドラッグストアでの広がりはもちろん、生活雑貨店やライフスタイルショップなど多様な販路への広がりが予想される。ライフスタイル提案の中にメンズコスメを組み入れていく流れも強まりそうだ。

武田学=本社ライフスタイル、レディスアパレル担当

(繊研新聞本紙21年12月6日付)

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