新型コロナウイルスの感染リスクをはらんだまま、今年も暑い夏を迎えることになりそうだ。マスクは必須になったが、日常的なアイテムになったからこそ着用時の快適性が一層求められる。作業服の市場では電動ファン付きウェアが充実し、カジュアル市場にも見られるようになった。ウェアラブル製品によるユニークな暑さ対策商品も登場している。
(小堀真嗣)
衣料用を転用
快適をうたったマスクと言えば、ユニクロが機能性肌着「エアリズム」の素材を活用したマスクが大きな注目を集め、買いたくても買えない人があふれた。より快適なマスクに対する人々のニーズが顕在化したと言える。無印良品は鹿の子など清涼感のある夏向け衣料用素材を活用したマスク(2枚組で税込み999円)を発売した。
快適マスクの開発を下支えするのが、素材・加工メーカーだ。各社は独自技術を生かし、自らもマスクの販売に乗り出している。例えば、小松マテーレは接触冷感や蒸れ防止、抗ウイルスなど八つの機能を持つ「ダントツマスクール」を開発。接触冷感性は0.2以上で効果があるとされるq‐maxが0.38という高い数値となった。価格は単品が1枚1500円、マスク1枚とマスクインナー5枚セットは2500円。
昨今は電動ファン付きウェアへの関心も高まり、「コロナ禍でもホームセンター経由の販売は良い」(各メーカー)という。作業服市場が先行したが最近は、カジュアルやスポーツ、アウトドアの市場でも見られるようになった。
AOKIは、電動ファン付きウェアの製造・販売を手掛ける空調服(東京)の協力を得て、「クーラーベスト」(1万5900円)を販売している。ストライプインターナショナルのアウトドアを切り口にした新ブランド「ドアフォーナイン」でも、ファン付きベスト(2万6800円)を販売するという。
ユニーク商品も
アウトドア用品メーカーのロゴスコーポレーションは、ファンを搭載したベルト(9900円)を発売した。ファンで外気を取り込み、ベルト上部から送風する。腰に装着して服の中に風を送る。衣服と一体型ではない手軽さを訴求している。
ユニークな暑熱対策を提案する事例も出てきた。ソニーは〝着るエアコン〟を発売した。暑い時に体を冷やし、寒い時に体を温める機能を備えた衣服型のウェアラブルデバイス「レオンポケット」は、冷・温を4段階調節できるウェアラブルサーモデバイスを、専用インナーウェアの背面上部のポケットに搭載し、首元から体を冷やしたり、温めたりできる。
ウェアラブル製品メーカーのミツフジは、暑熱リスクの見守りソリューションを開発した。産業医科大学と前田建設工業と共同で開発した心拍情報から深部体温上昇の推定ができるアルゴリズムを活用し、用途、着用シーンなどに合わせて衣服型、リストバンド型、イヤホン型などのウェアラブルデバイスを作り、見守りシステムとともに提供する。
(繊研新聞本紙20年7月10日付)