手製傘の「イイダ傘店」は9月8日から13日まで、東京・スパイラルビルの1階、スパイラルガーデンで15周年の展覧会「翳(かざ)す」を開いている。デザイナーで傘職人の飯田純久さんが中心となって過去15年に作り上げた傘400点近くを展示し、傘作りに関わる人たちとのつながりを振り返ったものだ。
会場奥のアトリウムには、243本の傘が鳥の群れの羽ばたきのようにダイナミックにつるされている。アトリエを再現し、傘の制作の様子を映像で伝えたり、飯田さんのスケッチノートを展示したりと、一つの傘ができるまでの過程を体感できる。興味をひかれるのは、普段は意識されない裏方の存在だ。傘を構成する一つひとつの部品を展示し、傘骨、ハンドル、布地を作る日本の職人の仕事を記録した映像も制作して紹介。また、15年を支えてきた43人の言葉と写真を編集した冊子も出版した。
展覧会の立案は昨年末のこと。多くの企業と準備を進めるなかで新型コロナウイルスの感染が拡大、計画通りの開催を懸念する声もあったが、職人気質の意志の強さを貫いて「妥協をせずに、やろうと考えたことはやらせてもらった。イイダ傘店の傘はそれぞれの部品を作っている職人の力があるから成り立っていて、僕たちの仕事そのものも、様々な立場の人が関わって互いに成り立たせている。それを形にしたいと思った」と飯田さん。