一村産業は繊維事業で今期(19年3月期)、中東向けが苦戦しているポリエステル短繊維の再構築や、中国内販の強化、非衣料分野の拡大など、七つの重点施策に取り組む。既存分野のマーケットの変化をつかみ、てこ入れや新市場開拓を進める。
(中村恵生)
今期の重点施策は①ポリエステル短繊維②カジュアル・スポーツ③ユニフォームそれぞれの再構築や、④非衣料分野拡大⑤中国内販強化⑥アリババ・ドットコムを活用した新市場開拓⑦受け渡し業務の改革。
中東民族衣装が柱のポリエステル短繊維事業は、16年以降に中東市場が低調となり、17年はこれがさらに顕著になった。主力市場のサウジアラビアで景気が落ち込んでいるが、「一時的な低迷ではなく、構造変化が起こっている」(柴司取締役繊維事業部門長)との認識だ。
このため、それに代わる用途として「新商品、新商流の開拓を急ぐ」。一例として、綿の細番手の市場をポリエステル短繊維織物で置き換えることを狙い、シャツ、カジュアル分野などを攻める。
カジュアル、スポーツの再構築は、ライフスタイルスポーツの市場が日本でも拡大しているのを受け、既存分野から対象を広げる。ユニフォーム分野は、20年の東京五輪開催も控えてここまで堅調に推移してきたが、今後の減速を見越して先手を打つ考え。人手不足の業種でユニフォームを見直す動きもあり、これらの商機をつかむ。
非衣料はこの間、旗幕・のぼり向けの生地売りを強化し、これを伸ばしてきた。さらに成長の余地があると見て深掘りするほか、建材事業との連携で新規商材の可能性も探る。
現地法人を置く中国は、自社での内販から手を引いていたが、改めてこれに挑む。ポリエステル短繊維を中心に日本生地で現地の問屋ルートを開拓し、市場ニーズをつかんだ上で、中国コーンバーティング品などの活用も視野に入れる。
アリババでの生地販売は今年初めに開始した。欧米、アジア、アフリカなど世界規模での接点作りが期待出来ることから「ウェブ上の国際展示会」と位置付け、新市場開拓につなげる構え。
業務改革は、今秋、大阪本社事務所を移転してワンフロア化するのに伴い、受け渡し業務から始める。各課でばらばらだった業務を標準化し、「知の共有や省力化につなげる」。RPA(ロボティック・プロセス・オートメーション)も導入を始めているほか、営業改革にも着手する。
同社の18年3月期業績(単体)は売上高177億5100万円(前期比2.1%減)、営業利益7億6400万円(5.3%減)、経常利益7億7200万円(5.7%減)と減収減益で、中東の落ち込みなどが響いた。うち繊維は売上高108億7000万円(5.1%減)、営業利益5億1900万円(5%減)。全社純損益は、大阪本社売却に伴う特損計上で10億2000万円の赤字(前期は5億4400万円の黒字)。今期は七つの重点施策実行で成長を目指す。