個性的「こだわりスト」スパークスとは⁉(宇佐美浩子)

2022/04/11 06:00 更新


何気なく耳にしてきたかもしれない音楽に、ある日、偶然にも、その作者を知る機会を得られることもある。たとえば、よく足を運ぶカフェやショップ、またテレビや映画など。

現在公開中の映画『アネット』の監督、レオス・カラックス。彼自身もかなりの「こだわりスト」(=「こだわりのある人」筆者の造語)の一人だと思うが、そんな彼の作品に登場する音楽もまた、かなりの「こだわりスト」によるものだと知った。

第47回セザール賞にて、「最優秀監督賞受賞」のレオス・カラックスと同時に、「最優秀オリジナル音楽賞」に輝いたのが、「ロン・メイル&ラッセル・メイル=スパークス」!

そこで今回の「CINEMATIC JOURNEY」は、「個性的『こだわりスト』スパークスとは⁉」をテーマに、映画散歩をしてみたく。

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というわけで、まずは前述の映画『アネット』におけるカラックス×スパークスの話題から。

デヴィッド・ボウイを知った数年後の13か14才の頃、彼らのアルバムのカバーが気に入り、「ジャケ買い」ならぬ、「ジャケ泥」をしてしまったことから始まった、というカラックスの「スパークス」ファン歴。還暦を迎えた彼の年齢からして、その長さにビックリ。故に「僕に人生の一部になった」という言葉の真実味に納得する。

僕にとってスパークスの音楽は、幽霊のいない子供時代の家みたいだ。彼らの音楽なしには、映画を始めた頃から夢みていた『音楽による映画』を作ることはできなかったと思う❞ 

(本作資料より)


こうしてめでたく完成した長編6作目となる本作は、2021 年のカンヌ国際映画祭のオープニングを飾り、そして監督賞も受賞というハッピー続き。

そんな気分をシェアするかのような上記、集合写真的1枚に収まった彼ら3人の姿がほほえましいシーンも登場する(すでにご覧になった方もいると多々おいでかとは思うのですが…)。

監督が初めて挑んだ英語作品かつミュージカルとなる本作にて、マリオン・コティヤール演じるオペラ歌手と共に、物語をリードする主人公のスタンダップ・コメディアンのみならず、初プロデューサーも兼務したアダム・ドライバー。そんな彼の一言も本作資料より下記に!

レオスの映画だからこの企画に関わりたいと思った。そしてスパークスが作曲したミュージカルだから…

最後に、筆者が称するところの「こだわりスト」である3人「歌詞:ロン・メイル、ラッセル・メイル & LC」、また「原案・音楽:スパークス」とクレジットされていることも取り急ぎ加筆したく!


アネット
ユーロスペースほか全国ロードショー中
配給:ユーロスペース
© 2020 CG Cinéma International / Théo Films / Tribus P Films International / ARTE France Cinéma / UGC Images / DETAiLFILM / Eurospace / Scope Pictures / Wrong men / Rtbf (Télévisions belge) / Piano


個性的『こだわりスト』スパークスとは⁉」をテーマに映画散歩中の「CINEMATIC JOURNEY」。いよいよ、その主役となる二人にまつわるトピックスをここに!


カラックス監督も熱愛するスパークスは、1972年のデビューから半世紀という芸歴を持つ、兄ロン&弟ラッセルのメイル兄弟によるアート・ポップ・デュオとカテゴライズされるそう。

そのサウンド・スタイルから今なおUKアーティストと思われがちだが、LA出身。とはいえそのテイストも相まって、ロンドンでの長きにわたる創作活動期間もある。

また時にはフランス、ドイツ、スウェーデンなど、活躍の場も、音楽スタイルも、それに伴いファッションも、多様に変貌を遂げているのも彼らならではの「こだわりスト」らしい個性ではないかなと。


そんな二人が主人公となる待望の映画『スパークス・ブラザーズ』がここに日本に上陸。監督は、当コラムでも紹介した『ラストナイト・イン・ソーホー』も手掛けたエドガー・ライト。

彼もまたスパークスを長年熱愛する大ファンの一人。だからこそ、その魅力の表現法に納得がいく。

私にとってスパークスは永遠の謎なんだ

(本作資料より)

そんな思いも込めて初めて挑んだ長編ドキュメンタリー映画は、2年間の密着、12時間に及ぶインタビュー、さらにベック、「レッド・ホット・チリ・ペッパー」のフリー、デュラン・デュラン、ビョーク(声の出演)ほか総勢80名の関係者や影響を受けたと語るアーティストらの証言をまとめ上げ、「こだわりスト」らしいテイストが満ち溢れ、「謎とき」の旅へと歩みを進める。

一方、当のメイル兄弟も映画とのコラボは念願だったという。なぜなら学生時代にUCLAで映画製作を学んだくらい、映画愛のある二人なのだから。

いわば相思相愛の関係が実現した「こだわりスト」たちの2作をご覧あれ!


スパークス・ブラザーズ
4月8日(金)よりTOHOシネマズ シャンテ、渋谷シネクイント他全国公開
配給:パルコ ユニバーサル映画
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うさみ・ひろこ 東京人。音楽、アート、ファッション好きな少女がやがてFMラジオ(J-wave等)番組制作で長年の経験を積む。同時に有名メゾンのイベント、雑誌、書籍、キャセイパシフィック航空web「香港スタイル」での連載等を経て、「Tokyo Perspective」(英中語)他でライフスタイル系編集執筆を中心に活動中



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