アートに生きる男たちのロマン<その2>(宇佐美浩子)

2019/07/17 06:00 更新


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サマースペシャルエディション2019として、「第7のアート(芸術)=映画」をキーワードに、前・中・後編の3部構成企画による7月の「CINEMATIC JOURNEY」。

テーマは「アートに生きる男たちのロマン」。

「中編」に当たる今回は時節柄、水着姿の(失礼ながら…)おじさんたちがずらりと並ぶフレンチシネマ『シンク・オア・スイム‐イチかバチか俺たちの夢』から!

≫≫<その1>はこちらから


写真をジックリと拝見すると、ビックリすることしかり。

中でも『傷ついた男』でセザール賞有望若手賞候補となり、以降『インド夜想曲』や『ニキータ』、そして『王妃マルゴ』ではセザール賞助演賞獲得するなど、とってもフレンチなイメージの中肉中背的な俳優と記憶していた‟あのジャン=ユーグ・アングラード??”(上記画像左側)と思ってしまったのは筆者だけなのだろうか…

長髪の売れないロッカー役を熱演しているではありませんか!!とはいえ、やはりそのお姿にはアーティスト魂が☆

というわけで、マチュー・アマルリックが演じる、うつ病を患いながらも妻の支えと理解に恵まれた主人公(下記画像)をはじめ、前述のアングラード、ギョーム・カネ、ほか誰もが主役級の俳優たちが、ミドルエイジとなり、同世代の男性たちが抱く悩みの数々を熱演し、スクリーンを通じてシェアする本作。

そしてまた今回は、「アーティスティックスイミング」という新技を習得し、より一層キャリアに磨きがかかったに違いないかと思った次第。


ところで『Le grand bain』(=「大浴場」)という、皮肉めいたネーミングも心憎い本作は、俳優としても認知度が高いジル・ルルーシュが、単独監督としてデビューを飾った記念作であり、セザール賞最多の10部門ノミネートほか、何かと好調なスタートを切ったという。

‟夢にも希望にも見放され、現実に幻滅した男性グループの物語です”(本作資料より)

と語る監督。 

そしてまた誰しも異口同音に、着想から上映に至るまでの長い道程には、乗り越えざる負えない幾多の難関がつきものだ。ルルーシュ監督ももちろん同じで、その良きアイデアソースとなったのが、スウェーデンの男性シンクロナイズド・スイミングチームのドキュメンタリー・フィルムだったそう。

こうして完成した本作は⇓

‟互いに相手の話に耳を傾けようとする人間的な温かさ。互いを受け入れ、共有する空気…”(本作資料より一部抜粋)

時に笑い、そして温もりのマリアージュが、「男たちのロマン」にふくよかさを添え、味わい深い1作が完成した!


『シンク・オア・スイム‐イチかバチか俺たちの夢』

7月12日より新宿ピカデリー、ヒューマントラストシネマ渋谷ほか全国ロードショー中

©2018 -Tresor Films-Chi-Fou-Mi Productions-Cool industrie-Studiocanal-Tf1 Films Production-Artemis Productions


「アートに生きる男たちのロマン」がテーマの「CINEMATIC JOURNEY」サマースペシャルエディション2019。

さて、「第7番目の芸術が映画なら、他には何が?」という「疑問符」が思い浮かんだ方も、きっと多いはず。そこで早速リサーチしたところ、「建築,絵画,彫刻,音楽,舞踏,文学」と並ぶ。

そこで次に訪れたいのは、現代アートを軸に、前述のほとんどを様々な革新的アプローチで紹介し、国内外にファンの多い原美術館。その館にまつわる「アートに生きる男たちのロマン」をヴァーチャルトリップ!


今年の春、ドリス ヴァン ノッテン青山店の10周年を記念した期間限定エキシビジョン「INTERPRETATIONS, TOKYO ―17世紀絵画が誘う現代の表現」を開催され、更なるファンも増えたに違いない原美術館。

だが、昨年末に「2020年12月をもって閉館する予定」という残念なニュースが発表され、悲しむファンもまた多い。そんな原美術館に関してのミニ知識を今一度シェアしてみたく思う。

財団法人(現・公益財団法人)アルカンシエール美術財団を母体として1979年、現在は理事長を務める原俊夫が、祖父で実業家の原邦造邸を開放して、原美術館という名で開館。当時の日本では、現代美術専門の美術館は珍しいジャンルで、話題を集めたといわれる。

また展覧会の内容のみならず、祖父の私邸として1938年に竣工した建物の魅力もかなり大きい。

中庭(画像下)を包み込むようなカーブを描いた空間デザインは、日本におけるモダニズム建築の好例とも称され、主の美意識の高さが伺い知れる。ちなみに設計は、東京国立博物館の現・本館(上野公園)や銀座の和光ビル(旧服部時計店)などの設計で知られる建築家、渡辺仁が担当した。

なお規模としてはかなり異なるものの、1983年に美術館として一般公開されている東京都庭園美術館とならび幅広く愛されている。

下記、中庭の写真には、7月28日まで開催中の崔在銀(チェ ジェウン)による発案・構成の「The Nature Rules 自然国家:Dreaming of Earth Project」展に参加されている、坂茂の作品(中央のオブジェ)も展示。


建築家にとって、ノーベル賞のような存在とも称されるプリツカー賞2019年度の受賞者でもある、世界的建築家、磯崎新の設計により1988年、開館したハラ ミュージアム アーク。群馬県渋川市の雄大な自然が広がる高原リゾート地に、原美術館の別館として誕生した。

モードな色調としてのイメージもあるブラックと、シンプルな中にも温かみのある佇まいは、まさに情熱あふれる2人の「アートに生きる男たちのロマン」の融合なのだと、イメージしている。

さらに2008年に増築した、明治時代の実業家で美術品収集家としても知られる原理事長の曽祖父、原六郎の東洋古美術のコレクションを中心に紹介する特別展示室「觀海庵」(画像下)も興味深い。

国宝や重要文化財を含む貴重なコレクションと、書院造を参照した宮大工や左官の伝統の技も見応えがある。


とりわけ、現在開催中(~2020年1月13日)の「加藤泉-LIKE A ROLLING SNOWBALL」展における、古美術の名品と共に展示される稀有な試みは必見(画像上)!

また最初の展示室内でも目に入る

‟たぶん、僕は今後もアーティストとして生きていく”

という(生涯アーティスト宣言だと理解している)壁に書かれた一文が印象的な本展は、原美術館でも8月10日より同時開催(~2020年1月13日)となる。また、国際舞台で活躍する彼の国内最大級と称すだけあり、作品展示数もトータルで180点近くとなっている。

さらに8月24日には、ミュージシャン「THE TETORAPOTZ」のドラム担当としてのライブも、アークで開催予定だ。加藤泉もまた「アートに生きる男のロマン」を体現する一人だ。(画像下)

なお2021年以降は、「原美術館 ARC」という名で群馬の地に活動拠点が集約されるとのことだ。


p.s.)数々のCMや雑誌、また女優としての顔も持ち、映画『リング』では貞子の母役を熱演するほか、年間150本以上の映画を鑑賞する、大の映画愛好家でもあったという。人生を思いっきり生き抜いたと称したいモデル、「雅子」の半世紀にわたる人生の幕を閉じたのは2015年のこと。

近くにいるから家族だからこそ、その全てを知っているかと思いきや、「実のところあまり知らなかった…」というケースは多い。

そんな彼女の夫で、テレビ番組の制作者である大岡大介が監督を務める『モデル 雅子 を追う旅』はメランコリックになりすぎず、プロフェッショナルのモデルとして生き抜いた一人の女性の人生を丁寧に描くという点で、彼もまた「アートに生きる男のロマン」をプロとして映画製作に挑んだと言えよう。


『モデル 雅子 を追う旅』

7月26日(金)よりUPLINK吉祥寺ほか全国順次公開

配給: フリーストーン

©2019 Masako, mon ange.


「アートに生きる男たちのロマン」がテーマの「CINEMATIC JOURNEY」サマースペシャルエディション2019。

中編となる「その2」はこの辺りで。この続きはまた来週!

<つづく>

宇佐美浩子の過去のレポートはこちらから

うさみ・ひろこ 東京人。音楽、アート、ファッション好きな少女がやがてFMラジオ(J-wave等)番組制作で長年の経験を積む。同時に有名メゾンのイベント、雑誌、書籍、キャセイパシフィック航空web「香港スタイル」での連載等を経て、「Tokyo Perspective」(英中語)他でライフスタイル系編集執筆を中心に活動中

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