国際人権NGO 人権ポリシー調査の結果を公表

2018/12/25 06:26 更新


 国際人権NGO(非政府組織)のヒューマンライツ・ナウ(HRN)、ビジネスと人権資料センターは21日、ファッションとスポーツウェア産業の人権ポリシーに関するアンケート調査結果を公表した。

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 アンケートはグローバルの売り上げ上位4社と日本の売り上げ上位30社、スポーツ、アウトドア、子供服、若者に人気のブランド・小売りを抽出し、計62社に送付した。調査期間は7~12月。送付した62社中、回答したのは、ファーストリテイリング、オンワードホールディングス、ワコールホールディングス、アダストリア、TSIホールディングス、三陽商会、ヤマトインターナショナル、パタゴニア、三起商行、アシックス、ハニーズホールディングス、良品計画、レナウン、ダイドーリミテッド、ギャップジャパン、H&Mジャパン、イオン、イトーヨーカ堂、アディダスジャパン、ミズノ、ストライプインターナショナルの21社。

 21社のうち、国際基準に即した人権方針・調達指針がある企業は12社。国際基準を満たしていなくともCSR調達方針を策定する企業は増えているが、サプライヤーに対して調達方針・人権方針を徹底する施策を講じていない企業が21社中3社あった。

 人権デューデリジェンスに取り組んでいない・着手していないと回答した企業は8社。グローバル企業や海外展開している日本企業は取り組みを進めている一方で、国内市場中心の企業の取り組みが遅れていると指摘した。

 サプライヤーの把握については、「1次サプライヤーまで」が6社、「2次まで」が9社、「3次まで」が5社。サプライヤーリストは「公開」が外資系3社、「部分的に公開」は5社だった。

 サプライヤーが技能実習生制度を使用しているかについては、「把握していない」が6社、「ある」が13社、「ない」が2社。人権侵害が発生した際の救済システムは、救済手続きがない企業や、あっても日本語のみ対応可とする日本企業が目立った。海外サプライヤーの労働者が利用できる救済手続きがあるのは7社、うち4社は多言語ホットラインを労働者が利用可能な状態で導入している。

 伊藤和子弁護士・HRN事務局長は「少数のリーディングカンパニーを除き、多くの主要企業が人権侵害をなくす仕組みが確立していない」と指摘。一方で、CSR調達方針の策定や監査の実施など近年になって前進例が増え、「今後さらなる取り組みを期待したい」と述べた。

 高橋宗瑠ビジネスと人権資料センター日本代表は、「問題視しているのは回答率の低さ。3分の1しか回答がないのは残念な結果といわざるを得ない」とし、外国人技能実習生問題弁護士連絡会の高井信也弁護士は「最低賃金が上がっても発注単価が上がらない問題もある。最低賃金が払える単価でなければ人権侵害が起こる。アパレル大手が監査に入れば救われる実習生がいる」と話した。

 HRNとビジネスと人権資料センターはアパレル各社や業界団体に対し、人権方針の策定や人権デューデリジェンスの策定、定期的な監査、サプライヤーリストの公開などの要請を続けるとともに、日本政府に対して国連ビジネスと人権指導原則の実施に関する実効性のある国内行動計画を早急に策定、実施すべきとしている。

 アンケート結果はHRNのホームページに掲載している。

右から、高橋氏、伊藤氏、高井氏


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