1995年8月30日は作家の山口瞳が世を去った日です。1926年11月3日の生まれですから、68年の人生だったことになります。編集者を経て作家になった人物。その間、サントリーの広告部に席を置いていたこともあります。
「トリスを飲んで、ハワイに行こう」は、その時代の山口瞳の文案です。サントリー入社は作家の開高健の紹介によるものだったそうです。
同僚にイラストレーターの柳原良平もいた。『男性諸君』の挿絵を柳原良平が担当したのは、その縁によるものです。『週刊新潮』の名物連載随筆で、これを読みたいがために買う人が少なくなかったものです。
山口瞳は「刺繍入りの靴下を履くな」と書いています。もちろん昭和40年代の話です。真意は「ご贈答用靴下を履くな」というところにあったのです。靴下は自分でお買いなさいと。もう今の時代はこんな御意見番はいなくなってしまいました。(服飾評論家・出石尚三)