90年代後半から00年代にかけて、本紙にストリートスナップの記事をたびたび掲載していました。30年近く前の、都会の一瞬を切り取っただけの記事ではありますが、その背景を店や企業に取材し、ときには売り上げなどの数字も入れていて、当時の商売の動きも少しわかります。“平成リバイバル”など様々なレトロが注目を集めている昨今、改めて読み返すことで、ビジネスに通じるヒントが見えてくるかもしれません。ベテラン記者が振り返ります。
※本文は読みやすく直しています。社名やブランド名などは原文のまま掲載します。
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ドカンと白 コート不振はね返す
1998年12月10日付
白のウールコートが売れている。ストリートで今、一番目立つのが白ダッフル。ファー襟のロングコートやシンプルなステンカラーも多い。ほとんどがこの1、2週間で街に出てきた。ショップでは11月に入って動きはじめて中ごろから急浮上、コート不振に打つ手なしとあきらめかけていた業者は大慌て。今では、白のウールコートは原反から店頭まで奪い合いとなっている。東京・渋谷109のショップなどセクシー系カジュアルでは、「白しか売れない。商品は足りないが、生地手当てが間に合わないのであきらめるしかない」という声も上がっている。
白のダッフルを買って「いま着替えたばかり」という女の子は、黒いコートを押し込んだ袋を示して満足顔。「カラーダッフルはみんな着ているからイヤ。白が可愛い」
セクシー系カジュアルの「セシル・マクビー」は、11月に24店で2000着の白コートを売った。12月に入っても勢いは衰えず、渋谷109店では6日の日曜に15着売れている。さらしたように真っ白なロングが一番の売れ筋だ。セクシーな細身でファー襟、ベルト付き。ベルトを外してループを穴の中にしまい込める。しかし、すでに在庫はない。生地の加工、縫製に時間がかかるので、18日の投入を最後に「今シーズンはあきらめる」という。
ショップのヴァンスでも「お客さんは、白しか見ていない」。6日の日曜、来店客が試着したコートは白だけだった。白いコートに白のセーターかミニスカートを合わせる〝白コーディネート〟も増えている。差し色はピンクかブルーかパステルチェックだ。
女の子だけでなく、男の子も白だ。「アトリエサブ・フォー・メン」では11月初めから売れ出した。コート売り上げの15%が白で、追加生産している。フード付きのスタンドカラーに人気が集まっている。
テキスタイルコンバーター、アパレルメーカーは白のコート地を探しているが、「取り合いで手に入らない」「これから作っても間に合わない」となげく。
来春夏のトレンドカラーは「白」。先取りするように、街には白のトータルコーディネートが登場している。
予想外の白の勢いに、「黒やグレーは残ってもなんとかなるが、白は止まったら最後。リスクも大きい」(赤川英)と懸念するメーカーもある。
《記者メモ》
ウールコートは単価が取れるアイテムとして、どう仕掛けるかが企業やブランドにとってとても重要でした。特に色は鍵。別の年には「ウーロン茶」(ウールのロング丈の茶色)が大ヒット、グレーの年もありました。
(赤間りか)