脱毛に悩む人へ、受注生産の「ハンドメイドハット」

2017/01/23 06:00 更新


 病気や治療による脱毛で困っている人に、自信と希望を届けたい――。季節や24時間の変化に応じて365日、患者が必要とする快適な帽子を個々人のスタイルに合わせ、受注生産で作る「ハンドメイドハット」が着実にユーザーの支持を広げている。

 同ブランドを手掛ける山崎仁美さんは神奈川県の葉山を拠点に、製作チーム8人を組織し、注文から1週間以内で配送する仕組みを確立。13年前に帽子を作り始めてから、累計約2万5000点の商品を提供してきた。

 山崎さんは大学の被服学科出身で、大手アパレルメーカーに20年間勤務し、市場調査などの職種を経験した。03年に乳がんの手術で入院した際、抗がん剤治療で脱毛して落ち込み、外出を避け、夏もニット帽やウィッグをかぶり過ごしてきた。

 その中で、暑さやアレルギーによるかゆみで悩む人が多いと知り、「患者さんが欲しいと思い描くイメージの帽子を作る仕組みが必要」と考えて開発に着手。同年内にホームページを開設し、思いを共有する洋裁歴の長いスタッフで製作チームを組織した。

 脳外科やがん患者の悩みを聞き、着け心地を最優先して縫い目が肌に当たらない設計や、気持ちをリラックスさせる美しい色や綿を中心とした素材を選んで企画し、3型から個別注文を受け始めた。

 

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「生活を彩り、患者さんの気持ちを楽にする帽子を届けたい」と山崎さん

 

 現在は治療時期や季節、用途別に8型を提案している。最大15色、小花やペーズリーなどの柄、パイピングやステッチ、シャーリングなどのテクニックも織り交ぜてデザインのバリエーションは増えた。24時間かぶり続けることができるようサイズ対応も可能。価格は2000~5000円前後に設定している。

 注文を受けると個別に相談に応じる。依頼者の生活スタイルや季節に添うデザイン、服に合う色や素材を選ぶためだ。治療初期は肌を刺激せず、軽くて通気性の良いガーゼのバンダナ帽子をお薦めする。頭頂部が冷える寒い夜の就寝時用は、良く伸びて柔らかいタオル地の脱げにくい帽子が人気だ。リバーシブルタイプやロングヘア風に様々な巻き方を楽しめる“風になびくバンダナ帽子”も好評だ。

 最盛期は1日10人ほどからオーダーがある。脱毛症や事故に合った患者、高齢者など予想を上回る反響があり、日本全国や海外在住者からも注文が入り、手応えを感じている。製作チームの各スタッフが自宅で作業し、2、3日で完成して山崎さん宅に集め、発送する仕組みで生産を拡大してきた。

 現在はネット販売と、試着できる病院での展示会を中心に販売活動をしている。常設展示場所は約10軒。病院でのカタログ配布と、一部卸売りもするが、病院関係者や患者の集まるイベントでの帽子講座や展示などで発信を強化中だ。「多くの患者さんが社会に出る力になる取り組みをもっと広げたい」考えだ。

 

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頭に巻き付けたりロングヘア風に多様なスタイルを楽しめる「風になびくバンダナ帽子」

 



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