震災の教訓、全国で共有を

2016/03/14 07:04 更新


 東日本大震災直後に被災地の取材に東北最大の商業地、仙台に向かった。新幹線が動かなかったので、飛行機で山形県に入り、そこを拠点に仙台周辺の地元企業の被害状況を取材した。取材中にも大きな余震が続き、現地の人とともに不安な気持ちを抱えながら数日間を過ごした。

 厳しい状況下で生活を送っていたにもかかわらず、取材に応じてくれた皆さんが「仙台は大丈夫だと発信してほしい」と共通して訴えたことが今でも心に強く残っている。

 それから毎年、3月11日前後に本紙で特集を組み、震災からの復興の歩みを繊維・ファッション産業を軸に様々な角度から伝え続けてきた。震災から3年後には、安定的な人材確保を目指し、福島県の縫製工場が地場産業のかりゆしウエアの製造が盛んな沖縄県の企業と業務提携し、技術の継承を進める前向きな姿を紹介した。

 また、石巻市で現地の若者と〝よそモノ〟が協業し、新しい価値の創出を目指した復興支援の動きも報道。被災地の人口や求人倍率の推移、小売店の売り上げ動向などもデータを駆使して地元の商業や暮らしの再建状況を書いた。昨年は、被災地発のブランドがファッション市場で支持を広げている様子を追った。

 今回は原発事故の影響が重くのしかかる福島県。県内の製造業が連携してブランドを立ち上げ、海外市場を目指し将来を見据えて一歩踏み出した取り組みを伝えている。同時に大型商業施設の被災地での地域のにぎわい創出の取り組み、首都圏、郊外でともに強化される大型商業施設の災害対策、街づくりを紹介する。近い将来、首都圏直下型地震などが想定される中、被災地以外の人たちにも震災の教訓、防災意識を少しでも共有されることを願う。

 大震災を契機に消費者意識は激変し、「良いものを長く愛用したい」という流れも一部には出てきた。メード・イン・ジャパンの商品に対する再評価にも象徴される。

 それを支えるのが東北など地方で働く人たち。被災地では復興も道半ばであり、人口流出や少子高齢化に拍車がかかる厳しい状況だが、地元に根を張り、未来に向け地道に歩み続ける企業の姿をこれからも伝え続けたい。(大竹清臣)



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