【ファッションとサステイナビリティー】欧米消費者の9割「服の買い方を変える」 “責任ある消費”移行も情報発信に課題

2022/12/02 05:29 更新


PVパリ7月展はサステイナブル素材の展示エリアで解説パネルを随所に掲示した

 国際素材見本市を主催する仏プルミエール・ヴィジョン(PV)とIFM(フランスモード研究所)が今年、欧米5カ国(仏、独、伊、英、米)7000人に実施した「エコレスポンシブルファッションにおける新しい消費者行動」調査で、90%近くが服の買い方を変えるつもりであることが分かった。責任ある消費行動へのシフトは明らかで、今後その流れを本物にするには、サステイナブル(持続可能)な素材や製造方法の情報を効果的に発信し、理解を促すことが重要であることも示された。

高まる環境意識

 服の買い方(複数回答)で最も支持を得た選択肢は「購入は減らすが、服の品質や原産地、組成により気を配る」だった。得票率は各国70%以上で、伊が84.9%と突出して高かった。次点は「エコフレンドリーなファッションを優先して買う」で、伊、仏、独では首位にわずかな差で迫った。

 調査は19年にも行っており、比較すると変化が際立つ。例えば、1年以内にエコフレンドリーな衣料品を1点以上購入したと回答した人が、19年は伊45%、仏45.3%、独43.4%だったのに対し、22年はそれぞれ伊78.4%、仏65.4%、独65.3%と20ポイント以上、上昇した。

 過去1年間にエコフレンドリーな衣料品に使った金額は、伊が227ユーロと最も多く、次いで独200.9ユーロ、英189.1ユーロ、米176.8ユーロ、仏160.3ユーロだった。衣料品の年間予算に照らすと、伊は45%、仏は33%、独は30%、米は21%を占める。


天然繊維に支持

 では、衣料品に求めるエコフレンドリーとは何か。「エコフレンドリーな衣料品を買う決め手になる一番大事な要素は」という単一選択の問いで、独、伊、英は「素材」を一番に選んだ。一方、仏と米は国内生産と関連づける傾向が強い。輸送による二酸化炭素の排出量を削減できるほか、自国で作られることへの安心感や品質への信頼が背景にある。

 素材は綿やリネン、ウール、シルクなど天然繊維が支持されている。対して「環境に悪い印象がある素材」は、ポリエステル、ナイロン、アクリルが各国共通でトップ3となった。

 一方、新たなオーガニック原料やリサイクル素材、植物由来素材などは「専門家や愛好家にしか」知られておらず、IFMは「一般消費者への訴求が急務」としている。今回の調査では、欧州で植物由来の化学繊維を知っている人は2.1%に過ぎず、リサイクルプラスチック素材の認知度も伊を除いて10%を下回った。

 エコフレンドリーな衣料品を購入していない人のうち、複数回答で40%が「情報不足」、37%が「そのような商品がどこで手に入るのか分からない」と答えており、情報発信の課題が浮き彫りになった。

ファッションとサステイナビリティー トップへ

(繊研新聞本紙22年12月2日付)

関連キーワードサステイナブル



この記事に関連する記事