国際素材見本市を主催する仏プルミエール・ヴィジョン(PV)とIFM(フランスモード研究所)が今年、欧米5カ国(仏、独、伊、英、米)7000人に実施した「エコレスポンシブルファッションにおける新しい消費者行動」調査で、90%近くが服の買い方を変えるつもりであることが分かった。責任ある消費行動へのシフトは明らかで、今後その流れを本物にするには、サステイナブル(持続可能)な素材や製造方法の情報を効果的に発信し、理解を促すことが重要であることも示された。
高まる環境意識
服の買い方(複数回答)で最も支持を得た選択肢は「購入は減らすが、服の品質や原産地、組成により気を配る」だった。得票率は各国70%以上で、伊が84.9%と突出して高かった。次点は「エコフレンドリーなファッションを優先して買う」で、伊、仏、独では首位にわずかな差で迫った。
調査は19年にも行っており、比較すると変化が際立つ。例えば、1年以内にエコフレンドリーな衣料品を1点以上購入したと回答した人が、19年は伊45%、仏45.3%、独43.4%だったのに対し、22年はそれぞれ伊78.4%、仏65.4%、独65.3%と20ポイント以上、上昇した。
過去1年間にエコフレンドリーな衣料品に使った金額は、伊が227ユーロと最も多く、次いで独200.9ユーロ、英189.1ユーロ、米176.8ユーロ、仏160.3ユーロだった。衣料品の年間予算に照らすと、伊は45%、仏は33%、独は30%、米は21%を占める。
天然繊維に支持
では、衣料品に求めるエコフレンドリーとは何か。「エコフレンドリーな衣料品を買う決め手になる一番大事な要素は」という単一選択の問いで、独、伊、英は「素材」を一番に選んだ。一方、仏と米は国内生産と関連づける傾向が強い。輸送による二酸化炭素の排出量を削減できるほか、自国で作られることへの安心感や品質への信頼が背景にある。
素材は綿やリネン、ウール、シルクなど天然繊維が支持されている。対して「環境に悪い印象がある素材」は、ポリエステル、ナイロン、アクリルが各国共通でトップ3となった。
一方、新たなオーガニック原料やリサイクル素材、植物由来素材などは「専門家や愛好家にしか」知られておらず、IFMは「一般消費者への訴求が急務」としている。今回の調査では、欧州で植物由来の化学繊維を知っている人は2.1%に過ぎず、リサイクルプラスチック素材の認知度も伊を除いて10%を下回った。
エコフレンドリーな衣料品を購入していない人のうち、複数回答で40%が「情報不足」、37%が「そのような商品がどこで手に入るのか分からない」と答えており、情報発信の課題が浮き彫りになった。
(繊研新聞本紙22年12月2日付)