商業施設などで内装を行うスペースは、〝ライトダウン〟をテーマにしたKIITE名古屋のクリスマスツリーを担った。暗がりに柔らかくともるツリーは来館者を引き付けたという。ここで使われたのは電力を使わない蓄光プラスチック。新たな表現と省エネルギーを組み合わせた。内装の分野でもサステイナビリティー(持続可能性)は欠かせなくなっている。さらにこの業界だからこその持続可能な社会への役割がある。暗がりのツリーを担当した尾西雄一郎クリエイティブディレクター兼名古屋本部クリエイティブ事業部事業部長に聞いた。
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暗がりのツリーの出発点は、「KIITE名古屋らしいもの」でした。お客はクリスマスの非日常を楽しみに来ますから、そこで環境配慮が前に出るようでは楽しくありません。そうしたあり方だったことから、「見たことがない」「今年が一番いい」といっていただけたのではないでしょうか。
使った蓄光プラスチックは、自動車部品の製造過程で出るものをリデュースしたもので、その点でも優れたものですが、実は夜間に光る防犯砂利としてしか使われていませんでした。メーカーにお声かけさせていただきましたが、用途を開拓するのも私たちの役割でしょう。
建材などのメーカーで環境保全を切り口にした商材開発が進んでおり、持ち込まれるものがたくさんあります。クライアントのSCなどからも環境保全を盛り込むことが要請されており、私たちは環境保全型の商材をそうしたユーザーに伝えやすい場所にいると意識しています。ただ、地域林業の持続可能性につながる国産材の使用は広がりつつあると言えますが、建材の採用をはじめとした環境保全型は価格の問題で大きな商いになっているとはいえません。仕組みとして機能するのはこれからでしょう。
そういった点で課題は少なくないのですが、私たちの事業は持続可能な社会に貢献できるものだと思っています。商業空間の内装はスクラップ・アンド・ビルドするものではありますが、建物としてみれば、リノベーションして、そこに新しい価値を与えて使い続けるということです。
JR奈良駅で大正のころに作られた和洋折衷の駅舎を保存する話がありました。15年に完成したのですが、観光案内所として活用しつつ市内では当時初のスターバックスが入りました。これにより、インバウンドと市民の新しい交流の場に生まれ変わっています。岐阜市川原町で空き家を伝統工芸の岐阜提灯で飾り、街並みに溶け込む銀行の支店にリノベーションしたものや、滋賀・米原市でゴルフ場をグランピング場にコンバージョン、人気の施設に生まれ変わらせるといった事例があります。
新たに建てるよりも投資が軽く済むということもありますが、社会の変化でニーズが変わりミスマッチを起こしているものを生まれ変わらせることができれば、永続的に使われることになります。こうしたことは業界の価値だと思います。商空間でもいろいろなことができると考えています。
(繊研新聞本紙23年2月22日付)