女性のバストを小さく補整するインナー「むねつぼみ」を製造卸するマヤジャパンの山本超基社長は、21年から毎年、LGBTQ(性的少数者)支援者(アライ)を増やすためのファッションイベント「関西アライモ」を開催している。「アライモ」はアライをもっと関西で増やしたいとする願いを込めた造語だ。近年は電車車両や美術館などパブリックスペースでファッションショーを行い、その認知を広げている。
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かつて同僚に2人のトランスジェンダーがいました。また兄が外見からは分かりにくい知的障害者だったこともあり、周囲の理解の浅さで生じる差別や偏見が、当事者の生活を厳しくする場面を多く見てきました。こうした経験からマイノリティーへの理解、多様性を認め合える社会起業家を目指したのです。
18年にトランスジェンダー向けのインナーのEC販売を始めました。EC販売では、どんな悩みに役立つ商品なのかを詳しく説明する文章が必要です。自分の文章で傷つく人がないように、各地のLGBTQコミュニティーを訪れ、多くの当事者の声を聞きました。
あるトランスジェンダーの方に自分にできることは何かをたずねると、「非当事者のアライからも声を上げてほしい」と言われ、その言葉がずっと心に引っかかっていました。
会社設立当時は行政の物作り支援サービスでの交流会にも足を運んでいました。その有志でファッションショーが企画され、音楽担当として生まれて初めてファッションショーに関わりました。アライの声の上げ方を自問していた時にファッションショーに出合い、関西アライモの発想につながりました。
LGBTQ支援のファッションショーはそれまでにない試みでした。ファッションショーはジェンダーの悩みに興味のない人や理解の浅い人でも参加しやすく、華やかで誰でも楽しませる力があります。過去4回の開催で徐々に認知も広がり、他イベントからも声がかかるようになりました。ファッションショーの力を改めて実感しています。
開催のたびに協賛企業を募りますが、その数は減っています。コロナ禍を経て協賛意欲の減退ありますが、理由の主たるものは費用対効果が薄いとされることです。反対にずっと協賛してくれる企業もあり、協賛は経済効果ではなく「思い」の強さが決め手となっています。
関西アライモは当事者、非当事者にかかわらず、憧れられるイベントを目指しており、ショーの品質を高く保つことを強く意識しています。アライモの当事者モデルは定期的にプロのウォーキングレッスンも受けています。ボランティアでは品質が課題になることが多い。強い共感を得るには品質も問われていることを肝に銘じています。
(繊研新聞本紙25年1月28日付)