ファッション業界では、人手不足や採用難に悩む企業が多く、人材のレベルアップも業界共通の課題となっている。そのような業界各社に向けて、日本ファッション教育振興協会は4つの検定を中心に、OJT(現場教育)中心の社内教育の補完や、人事制度改革に活用する提案を強化中だ。
昨年から4検定の社内教育への活用を始めたTSI HD(以下、TSI)の下地毅社長と、自らファッションビジネス能力(FB)検定1級を受検し、合格した互興の森谷真樹社長の対談を実施。両社が目指す社内教育や人事制度のあり方について、「資格活用」をキーワードに語ってもらった。
「資格」を仕組みへ
――FB検定を受けた経緯と感想は。

森谷 当社は中堅の繊維専門商社です。繊研新聞のインタビューで、最重要取引先のTSIの下地社長が推奨している資格があると知り、興味を持ちました。これまで社員にビジネス寄りの資格を求めていましたが、ビジネスとファッション双方を網羅する検定の必要性を感じていたので。
実際に受検してみて、弊社の納品後の流通側の知識を得ることができ、自分の業界理解を見直す機会となったと感じています。3級・2級と段階があり、社内で学びを奨励する資格試験として使いやすい。試験曜日など選択肢が増えると、社員や経営層も気軽に受けられると思います。
――社内教育で4検定の活用を始めた狙いは。

下地 OJTや口頭ベースで指導するアパレルの常識に課題を感じていました。上司の力量や方針によって、次世代の質に差が生じてしまうからです。また、昔からアパレル企業では、販売職や技術職の方が、本社要員より軽んじられる傾向がある。上司や職種が違っても教育内容の一定の質を担保して成長を促し、教育水準をさらに高めていく制度が必要と考えました。
検定は教育の一定の質を保ちやすい。資格をキャリアの基準値としていくために、TSIでは昨年からこの4検定の受検料の全額補助を始めました。勉強や受検の時間確保は大変ですが、検定受検も仕事の一つとして、時間を捻出しながら仕事も頑張ってもらうための支援も心がけています。土日に学校で受検することは販売職には難しいので、平日に会社を会場として提供し、東京と大阪で試験を実施。他社社員も当社で受検しており、広がりを期待しています。
――4検定について評価している点は。
下地 様々な検定の内容を吟味すると最もバランスが取れている点です。将来的にはファッションに無かった国家資格や技能検定に近い水準の資格として、キャリア設計に対する社内評価にも活用し、対外的にも認められる資格に水準を上げていけるといいですね。検定を受けることで、業界全体の底上げや賃金アップにつながるようにしたい。業界全体で取り組む大きな課題なので、経営側もしっかり支援していく必要があると思っています。
部署&企業を超えた交流で、更にスキルアップを
――この検定を経営層が受ける意義と、今後の活用法は。

森谷 社員に学びを求める立場として、役職就任後も研鑽が必要です。今後は社員の能力向上と、企業間交流に活用したい。企業同士で合同勉強会を開き、自社の得意分野を教え合うなど検定を機に幅広く学ぶ機会があると、業界の底上げにつながる。外部と接点を持つことで、誰の役に立つ仕事なのかを知る機会にもしていきたいです。
会社としてもその後押しをしています。社員の自己啓発支援として、支援検定テキストの全額補助と、合格時の検定費用全額補助を行なっています。
下地 企業間交流の話が出ましたが、社員向けに、サステイナブル素材・製品の展示会を開いています。豊島やスタイレムの取り組みを話してもらい、非常に興味深い化学変化が起きている。ワールドとは、互いにリブランディングに成功した役員や社員を招き、経験を話してもらう形で交流を始めています。検定による広い学びの空気作りは、意識的に縦割りを壊し、横串の部隊を作る取り組みへと繋がるとよいと考えています。
――人材育成の課題は。
森谷 当社はOJT中心だったので、先輩によって成長に差が出てしまうこと、近年ではそもそも教える人材も不足していることも課題でした。
その中で、社員教育の仕組みを設けるだけになるのは問題と考えています。そのビジョンや有用性を伝え、社員に使ってもらえる仕組みとする熱意を意識したいです。
下地 トライアルの取り組みが中心なので、いかに継続していくかが次の課題です。実質5,000人の社員が働いているので、各リーダーが熱量を持って細部に伝えていけるようにしたい。26年の会社のテーマは「学び」です。学び始めていくスタートの年とし、みんなで様々なことを学んでいこうと訴えています。稼いだものを次の学びに投資していく流れを従来以上に作っていきたい。人事の役割がすごく大事で、人事との連携が大きな比重を占めています。人事評価制度にも「リーダーはこの水準の資格は取っておこう」と示し、ある程度の資格を持った上で運営に当たってもらうようにするつもりです。
――スキルアップについて思うことは。
下地 学びを呼びかける際には、主体的に動くための道具として検定の活用を促しています。一定の水準を持つプロの横串を作っていくと、各自の役割を考えながらバランスよく潤滑に仕事ができるようになる。ファッションエンターテインメントを掲げる企業の社員、一市民として社会に貢献できるようになるために、各自がスキルアップしてほしいと話しています。広く学ぶ姿勢を大事にし、他部署とも関係を構築することで、会社は変わっていくもの。交流の場として本社1階にカフェを作り、人が集い意見を交わせる場として活用しています。
――業界から同協会の検定への期待は。
下地 フランスでは、ファッションの国家資格の認知度は高い。日本のファッション業界の地位は一部を除いてまだ低い。社会的地位を高めていくために、資格検定を広げる活動を続け、業界として進化していくことが大事だと思います。
≪対談の様子は、下記の動画URLにて視聴可能です≫
https://youtu.be/XD07daFyhYs

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