《ちょうどいいといいな ファッションビジネスの新たな芽》「zutto matsurika」 言葉に頼らない服に込めた優しさ

2026/03/30 11:00 更新NEW!


ブランド名の「zutto matsurika」には優しいつながりが広がっていくことへの願いが込められている

 「ファッションを買いに来る人は、まずワクワクを求めていると思う」。そう語るのは、子供服とレディスウェアの「zutto matsurika」(ズットマツリカ)を主宰する髙橋直子さん。誰かと少し関わることで自分の世界が開かれていく。そうした経験を、服や雑貨を通して、人・社会・未来に届けたい思いがあります。

【関連記事】《ちょうどいいといいな ファッションビジネスの新たな芽》「MOUN TEN.」 子供の成長をおおらかに見守る服

つながる喜び

 髙橋さんは英国の大学でユニバーサルデザインを研究し、イッセイミヤケで19年間、海外統括・商品企画・マーケティングに携わって独立しました。25年に立ち上げたズットマツリカは、生まれた時から病気を持つ子供との暮らしの経験を反映しています。それは動きやすさや着脱しやすさ、肌触りが良く、家庭洗濯のできる素材を使うといった機能面に限りません。

zutto matsurikaを主宰する髙橋直子さん

 体の動きや感覚に寄り添い、「大人と子供で同じデザインを身にまとうことで、視覚的なつながりを感じられる喜び」を形にしています。服を着やすさの側面から語られることよりも、ファッションとしてユニークな魅力を持って、「様々な人が、世代を超えて、心地よく」着られる日常着を目指しています。

「時間を重ねて、育つ服」をつくっています

伝えすぎない

 当初から、その理念をどのように社会の中で実現していくかという課題に向き合ってきました。子供服中心で始めましたが、展示会やポップアップでの販売を重ねるなかで、一般的な大人服のニーズの高さを改めて実感したそう。事業の持続を考えて商品構成を見直しました。

 コミュニケーションも改めました。最初は身体的な特徴のある子供にも着やすい工夫を積極的に伝えていましたが、接客時に「身体的な特徴のある方でも」と説明すると、お客様が自分事として思わず、離れてしまうことがあったそう。その言葉が、着る人の可能性や幅を広げるのではなく、対象を限定する印象を与えてしまうのだと気付きました。特定の経験から生まれたデザインを、いかにより多くの人に届けられるか。ズットマリカの取り組みは、そうした問いと隣り合わせにあります。

26年1月にNEWoMan横浜で開催したポップアップショップ

 「物作りと活動を通じて、社会を変えていくような仕組みづくりをしたい」と髙橋さん。今後は様々な事情から働ける時間に制限のある人が、柔軟に関われる仕事のあり方をつくりたいそう。そのためにまず、認知度と売り上げの向上を目指し、事業を成長させること。ビジネスコンテストでの受賞や、武蔵小山創業支援センター1階にショップをオープンするなど、歩みを進めています。思想を現実の形へと変えていく過程にあります。

26年3月に武蔵小山にオープンした店舗

■ベイビーアイラブユー代表取締役・小澤恵(おざわ・めぐみ)

 デザイナーブランドを国内外で展開するアパレル企業に入社、新規事業開発の現場と経営に携わる。14年に独立しベイビーアイラブユーを設立。アパレルブランドを中心に、ブランディングと事業推進を軸とした支援を行い、デジタルやデザイン領域まで横断的に手がけている。



この記事に関連する記事