雑誌編集者から異色の転身 弁護士・海老澤美幸さん

2018/07/02 06:28 更新


 「法律に関わる問題が結構多いんですよ、ファッション業界は」と話すのは、雑誌編集の世界から法曹界に身を転じた異色の弁護士、海老澤美幸さん。編集者時代から業界に知見のある法律家がいないかと思っていたが適任者が見つからず、「じゃあ、自分がなろう」と決めたそう。

 キャリアはまだ浅いが、法律や弁護士との垣根を低くするのが自分の役割と考え、法律の相談窓口サイト「ファッションロー・トウキョウ」を立ち上げた。「もっと気軽に相談してほしい」と話す。

(永松浩介)

様々な問題や慣習

 慶応大学卒業後、キャリア組として総務省に入省。その後、ファッション好きだったことから宝島社に入社、『スプリング』の編集者になった。4年勤めた後、ロンドンの有名エディターのアシスタントとして2年ほど活動しフリーのファッションエディターに。帰国後『エル』や『ギンザ』『ハーパーズバザー』などで活躍した。

 雑誌を中心にファッション業界に身を置くなかで様々な問題に遭遇した。「写真の2次使用の問題から、労働環境、ハラスメントの問題、知的財産、スポット仕事の不払いなどたくさんある」。業界に根強く残る徒弟制度的な感覚や「好きなファッションの世界で働いているのだから我慢すべき」といったあしき慣習もあって、多くは泣き寝入りで問題が顕在化しない場合が多いという。

 そうした現場を見ていた海老澤さんは一念発起、東日本大震災発生後の11年3月末に全ての仕事をやめ、法律家を目指すことにした。秋に行われるロースクールの試験準備を始め、12年4月に一橋大学の法科大学院に入学、卒業後2回目の司法試験で合格し、16年末に晴れて弁護士になった。

 未払いや知的財産保護など、業界の古くて新しい問題などの相談が多いそうだが、「#ミートゥー運動」の広がりから最近はセクハラに関する相談が多いとか。

気軽に早く相談を

 実際に相談を受けるなかでは、初動が遅いと感じている。「穏便に済ませることができるのに、『寝かせて』しまうから問題が大きくなる」。内容証明郵便を送ったり送られたり、訴訟を起こしたり起こされたりする前に、相談することで解決できる道はあるという。「だから、法律とか弁護士とかの敷居を低くしたいんです」。

 今年1月には「ファッションロー・トウキョウ」を立ち上げた。法律相談の窓口サイトで、1回目の相談は無料にしている。業界の習慣や仕事の流れを分かっている弁護士がいれば「問題を必要以上に大きくせず、円滑に解決できるはず」という。

 所属する林総合法律事務所には企業合併に詳しい弁護士や労働問題が専門の弁護士などもおり、多様な相談を受けることができるそうだ。「大事に至る前に問題解決の道はあるから、気軽に相談してほしい」と話す。

「穏便に済ませられるのに相談しないことで大事に至ってしまうことが多い」と海老澤さん


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