SNS上で、中国で製造されたとする映像に併せ、欧米ブランド製品に酷似した商品を「同等品質」として安価に紹介する投稿が急速に拡散している。ただし、フランスの主要ラグジュアリーブランドに関しては中国に製造拠点を持たないため、出回っている商品はいずれも模倣品、あるいは誤認を誘う情報操作とみられる。
(パリ=松井孝予通信員)
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4月以降に動画が急増したことから、トランプ関税をめぐる米中対立がきっかけとみられている。投稿はブランドの製造実態を暴露するかのように構成され、欧米の消費者、特に「見た目が似ていれば十分」とする「デュープ」文化が広がる若年層に向けて模倣品の購買を促す内容となっている。一部の投稿は数億回再生されていて、中国の通販アプリへのアクセスが急増するなど購買行動への影響も懸念される。
仏メディアの報道によれば、これらの拡散には、投稿の集中や関連サイトの同時開設など、組織的な情報操作も示唆している。当初は米国ブランドが主な対象だったが、現在では仏ラグジュアリーブランドもSNS上で拡散の対象となっており、製品の出自や品質に関する誤解が広がりかねない。
仏調査会社ブルームは、この現象を「典型的な例」と位置づけている。背景にあるのは、米中の関税政策による価格上昇への反発で、誤情報の拡散はその副次的帰結として発生している。
ラグジュアリーブランドにとっては模倣品の存在そのものよりも、正規品であるという信頼が損なわれることの方が長期的には深刻な脅威となりうる。
現時点で、仏ラグジュアリーメゾン各社はこうした動きに対して公式な対応を示していない。