パリを拠点に活動してきた「ゴレム」のデザイナー前濱進作が、東京・豊島区にウェディングドレスのショールームをオープンした。フロアに揃うのは、前濱が12年にスタートしたウェディングドレスのオーダーメイドブランド「エメス・パリ」。これまでは友人やアーティストに向けて個人的に作ってきたが、東京に拠点を構えて本格始動した。
「僕の原点はハンドメイドです。ゴレムも最初はそうでしたが、コレクションを量産するようになってお客さんの顔が見えなくなりしんどくなってきた。改めて一点物で物作りがしたいと思うようになりました」と前濱。そんな思いから、個人オーダーに応えて作ってきたウェディングドレスのブランドを始めた。数年を経て、ビジネスとして成り立つと判断。40歳の節目の今春、ショールームをオープンした。
ショールームは、千川駅から徒歩5分。素朴な住宅街に突如現れる瀟洒(しょうしゃ)な集合住宅の1階にある。ヨーロッパのアパートのような中庭があり、敷地をゆったりと使った静かな空間には、オーナーの方針でアーティストや作家が多く入居している。
天井の高いショールームのエントランスも、ヨーロッパのムードが漂う。そこに飾られているのは、セピア色の結婚写真の数々。前濱がパリのアンティークショップで買い集めたものを額装して飾った。奥のショールームはモダンな空間に、手作りのドアや床を組み合わせて、前濱好みのアンティークな雰囲気を加えた。
ドレスは、パニエを使わないスレンダーラインが中心。すっきりとしたドレスに、前濱が収集してきた繊細なアンティークレースが上品に飾られている。「アンティークレースには使っていた人々の幸せな思いが込められている。受け継いできた思いや記憶を今につなぎ、ドレスに命を吹き込みたい」という。ヘブライ語で「命を吹き込む」という意味のエメスがブランド名になった。素材はそのほか、200年前に作られたリバーレース編み機で作った繊細なシルクチュールや、アンティークパーツなどが使われている。
フルオーダー、セミオーダー、レンタルの3形態。フルオーダーは希望のイメージや式場のロケーション、カウンセリングアンケートなどを参考にしながらデザインし、世界に一つだけのドレスに仕上げる。40万~80万円、制作期間は3~5カ月。
セミオーダーはショールームに展示しているサンプルからデザインを選び、体形にフィットしたドレスを作る。素材やレースの柄を変更することもできる。30万~50万円、制作期間は2~3カ月。レンタルは3泊4日で15万~30万円。いずれも専門スタッフやデザイナー自身が対応する。
ドレスの販売だけでなく、パリ市内でのロケーション撮影も受け付けている。長年、活動してきたパリのショールームを拠点に、1日に3カ所で撮影する。40万円(ドレス、アクセサリー、ヘアメイク、ロケバス込み)。今後は、ホテルのブライダル向けドレスブランディングのビジネスも計画中で、沖縄や軽井沢のホテルと交渉中だ。ショールームのオープンに合わせてゴレムは一時休止中だが、20年秋冬にオートクチュールコレクションとして再開する。