エコ素材、次の一手 秋冬欧州素材見本市から㊥

2019/09/15 06:29 更新


 サステイナビリティー(持続可能性)の流れに乗り、ファッション市場に浸透し始めたエコ素材。本格普及も目前と言われるが、足元の販売は停滞気味だ。高まる関心を購入に結び付けるためには、見えにくいサステイナビリティーの価値を可視化することが重要で、欧州テキスタイル企業は、顧客や消費者とのコミュニケーションを強化している。

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素材だけでなく

 サステイナブルな物作りを志向するテキスタイル企業は、織り・編みから染色、整理加工など、生地になるまでの各段階でも、節水や省エネルギー、二酸化炭素や廃棄物の排出削減といった環境負荷の軽減に取り組んでいる。環境のあらゆる問題と密接に関わり、サステイナブルな物作りで重要な位置を占めるが、「アパレルの関心は、(リサイクル原料や再生繊維といった)素材そのものにとどまっている」(エルコレ・ボット・ポアーラミラノウニカ会長)という。「取り組むだけでなく、もっとアピールが必要」という認識が、欧州テキスタイル企業で広がっている。

情報をクリアに

 丸編みメーカーのラグジュアリージャージーは、原料だけでなく、染色の工程で使用する薬剤などもトレーサビリティー(履歴管理)を確立した。大手ラグジュアリーブランドグループの要望からだ。

 伊コモ産地大手のカネパ・グループも、サステイナビリティーの先進的な取り組みで注目されるメーカーだ。サステイナブル生産の研究開発部門を設け、10年以上前から生産プロセスの改善に積極投資してきた。産学連携で、経糸を補強するために付けるのりをキトサン由来のポリマーに替える「セーブ・ザ・ウォーター・キトテックス」も開発した。

 この技術に加え、リサイクル原料や再生繊維を使い、GRS(グローバル・リサイクル・スタンダード)やFSC(森林管理協議会)認証などの環境認証を取得した生地を「カネパ・グリーン・ラボ」のブランドで販売している。「クリアな情報が与えられなければ、サステイナブル素材とは言えない」とし、生地ハンガーの下げ札にはQRコードを付け、使用素材の情報にアクセスできるようにした。店頭での訴求にも活用してもらう考えだ。

素材情報にアクセスできるQRコード付きの下げ札は店頭の販促ツールにも(カネパ)

 マリーニ・インダストリー・グループも、早くからサステイナブル素材を打ち出してきた1社。ノンミュールジングのウォッシャブルウール、オーガニックのストレッチリネン、リサイクルポリエステルなどエコを切り口にした素材を幅広く揃える。米国の大手SPA(製造小売業)を中心に取り組みを深め、取り扱いの6割近くが、環境認証を受けたサステイナブル素材となった。今後の拡販には「コミュニケーションが不可欠」と見て、動画を制作。美しい自然に囲まれた工場風景とともに、100%自家発電、汚染物質を除去する排水処理設備など環境に配慮した生産現場を映像で伝えた。

 毛織物メーカーのレダは、環境保全の取り組みなど「見えない価値を伝える」重要性を指摘し、デジタルトランスフォーメーションをいち早く推進してきた。SNSを通じ、原毛を調達する農家や紡績から製織、仕上げまでの生産工程、本社オフィスの映像を配信している。今秋からは、サステイナビリティーをテーマにした広告キャンぺーンにも乗り出す。一般紙やウェブメディアでも取り組み、自然環境に責任を持って事業活動を行う企業姿勢を消費者にも示す。キャンペーンに先立ち、伊ミラノで行ったイベントでは、会場に設営された飛行機を舞台に、原毛を調達しているニュージーランドから、レダに向かう旅へといざない、原毛の調達から生地ができるまでの一連の流れを「顧客に経験として感じてもらう」演出がなされた。

(繊研新聞本紙19年7月30日付)



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