「ドルチェ&ガッバーナ」の最高級コレクション「アルタ・モーダ」(高級仕立て婦人服)、「アルタ・サルトリア」(高級仕立て紳士服)、「アルタ・ジョイエッレリア」(ハイジュエリー)の発表イベントが、7月に南イタリアのプーリア州で開催された。
(ミラノ=高橋恵通信員)
毎回、開催地の伝統や職人の手仕事を深く掘り下げてフォーカスするドルチェ&ガッバーナ流の演出が話題となる。今回の舞台であるプーリア州はイタリア半島の〝かかと〟に位置する。家族愛が深く、伝統的な手仕事が残る土地柄は、ブランドのオリジンであるシチリア島と共通する。
アルタ・モーダの会場は、円錐(えんすい)形の屋根を持つ建物「トゥルッリ」で知られるユネスコ世界遺産の村、アルベロベッロ。
コレクションには、日々の糧であるパンを入れるかごに着想したドレスやジャケット、南イタリアのお母さんが身に着けるような頭巾やエプロン、手織りの布、刺繍などの手仕事を生かしたドレスやスーツなどが数多く見られた。トゥルッリがモチーフの帽子やケープもある。コルセットドレスはシフォンやチュールなどを重ねてセクシーに。フラットなニーハイブーツと組み合わせ、はつらつとした印象を与える。「ママがパスタを作るように、村人のリアルクローズをアルタ・モーダ流で手作りした」とデザイナーのドメニコ・ドルチェとステファノ・ガッバーナ。
農作物を抱えた村人、ロバや子ヤギなども登場した。「この村のオリジンを尊重し、リアルな生活を見せたかった。コレクションは夢のようなものだが、村人と交わることで滑稽なパントマイムに陥ることなく、本物の厚みが出る。アルタモーダは決してノスタルジーの表現ではなく、イタリア人としてのオリジンを探求する行動。アイデンティティーや伝統を掘り下げて、オーセンティックでシンプルな美を追求した」。
アルタ・サルトリアは〝白い町〟として知られるオストゥーニで開催された。コレクションのインスピレーション源は、イタリアで花嫁に贈られる「コレド」。刺繍やレースのハンドワークを施したテーブルリネンやベッドリネン、ナイトガウンなどだ。娘が生まれてすぐに母親が準備を始め、長い年月をかけて手作りし、代々受け継がれる。それらを使ったテーラードスーツ、ローブコート、ケープ、シャツスーツは、優雅なリゾートシーンが思い浮かぶ。白やベージュの素朴なコレドは、クリスタルビーズや金糸の刺繍で、ロマンティックでゴージャスな印象となった。
「女性の手仕事の象徴が男性のテーラーリングピースに生まれ変わる。家族代々の歴史と伝統をまとうということ」。コレドは全てアンティークで、中には16世紀のものもある。アンティーク商、ナポリやシチリアの家庭まで探して集めたという。
アルタ・ジョイエッレリアの代表作の一つは「プーリア州の宝石」とも呼ばれるオリーブをモチーフにしたネックレスやイヤリング。グリーントルマリンやエメラルド、ツァボライトガーネットでオリーブの実をかたどった。