前回は、大企業が購入型クラウドファンディングを活用し、自社製品のテストマーケティングやPR/プロモーションを行った事例について書きました。今回からは、購入型クラウドファンディングを成功させるための考え方や必要な準備、取り組みに関するポイントについてご紹介していきます。
具体的なノウハウについて触れる前に、前提としてよく起こりがちな誤解を解くことから始めたいと思います。弊社でもクラウドファンディングサイトを複数運営しているため、筆者自身もクラウドファンディングに挑戦することを検討している方々からご相談をいただくことが多々あります。
その中で、最もよくあるのが、「クラウドファンディングサイトにプロジェクトを掲載すれば、自然に購入者や支援者が集まる」という誤った認識です。つまり、クラウドファンディングサイト自体の集客力を過度に期待し、依存してしまっているため、本来成功の確率を高めるために実施すべき準備や活動を怠ってしまうことが多いのです。こういったケースでは、ほぼ大半のプロジェクトが成功せずに終わってしまいます。
そもそもクラウドファンディングに掲載される内容は、基本的にはまだ世の中に無いような新しい製品や独自の取り組みであることが多く、ほとんどの場合、一般消費者の中でそのプロジェクト内容に対する需要は顕在化していないため、グーグルなどの検索サイトで検索することも無ければ、楽天やアマゾンと言った大手ECサイトに訪問して探すこともありません。
市場は拡大しているものの、まだその成長の過渡期にあるため、現時点においてはクラウドファンディングサイト自体には大手ECサイトやショッピングモールのような集客力は期待せず、プロジェクトを掲載した起案者自身がいかに共感を呼び、多くの方にプロジェクトを認知してもらえるように発信をしていくかが非常に重要になってくるのです。
一般的に、クラウドファンディングにおいて成功するための考え方として、「1/3の法則」というセオリーがあります。これは、クラウドファンディングで集めることを目標としている金額のうち、約1/3は起案者自身の直接的な知人や友人から、約1/3はその知人や友人の方々の知人や友人から、残りの約1/3は、それ以外の方々からの支援・購入を集めるというものです。
つまり、一部例外を除き、成功するプロジェクトの大半は上記の通り約2/3を既存のネットワークや信頼関係の延長線上で支援・購入を募っているということになります。これが、クラウドファンディングにおいてソーシャルグラフ、すなわちSNS(交流サイト)の活用が重要だとされているゆえんです。
次回も引き続き、クラウドファンディングを成功させるための、より詳細なポイントを具体的にご紹介していきます。
(北嶋貴朗・Relic代表取締役CEO)
