カジハラデザインスタジオの複合施設「コキュウ」 思い描くライフスタイルを体感

2024/07/31 13:00 更新


 「思い描くライフスタイルを体験するスペースとして作りました」と梶原加奈子さん。

安らぎの時間を提供

 COQ(コキュウ)は、テキスタイルデザイナーで産地の発信などをサポートする梶原さんが代表を務めるカジハラデザインスタジオが17年、札幌市真駒内に設けた複合施設。支笏湖に向かう国道沿いで、札幌芸術の森に隣接する1200平方メートルほどの土地に、2階建てで延べ床面積1800平方メートルの建物を設けたもの。1階がレストランとショップ、2階が宿泊施設になっている。ガラス面を多用して周辺の豊かな自然を取り込むが、椅子張り、寝具、間仕切りに使うテキスタイルなども周辺環境と融合してデザインされている。レストランでは北海道産の素材を生かしたメニューを出す。

併設したショップで見せる

 外観は際立つものではなく、「ここだからできる」安らぎの時間を提供する施設として、運営もそれを重視してきた。開業当初は、レストランに1日100人が来るようなことがあり、「あまりに忙しく、これは違うと思いました」。そこで、予約制にし、人数の制限も設けることにしたという。ショップもここで売り込むというより、ショールームの役割で、買ってもらうのは札幌であれば、中心部の大型施設に取引先が出す期間限定店といった流れになっている。

豊かな自然の中で目立たない外観

地方の価値引き出す

 「ここでビジネスを表現するわけではない」形だが、一方で、衣食住が揃うライフスタイルや、フィロソフィーを発信する場として「10年かけて育てる」ことを目指した、完全自社運営の事業でもある。コロナ禍の影響がなかったわけではないが、安らぎを提供する在り方のレストランは、家族の記念日での利用者を呼び込んでおり、自然と融合する宿泊施設は、海外などから「検索してわざわざ来てくれる」ようになり、今後の利用者の拡大が見込めるという。

 札幌に設けたのは、梶原さんの出身地で、拠点が欲しいと思っていたからでもあるが、「ローカルに人を呼ぶやり方を示したかった」とも話す。地方をどう活性化させるかは、各地で課題になっているが、「思想、感性を注入する」ことによって、豊かな自然や人が少ないといった東京などの大都市にはない地方の価値を引き出そうとしている。

 「なかなか戻れない」のは目下の悩みだそうだが、2階には将来のクリエイションに備え、アトリエもある。

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