レディスアパレル、靴のクロシェ 24年までに受注生産を8割に

2020/07/25 06:28 更新


 レディスアパレル、靴などの製造販売、クロシェ(神戸市)は24年までに受注生産比率を80%に高める。過剰生産、大量廃棄による環境破壊がアパレル産業最大の課題と考え、サステイナビリティー(持続可能性)を企業の軸に据えることにした。期限を区切って取り組むことは後戻りしない姿勢を内外に示すもので、コロナ禍を経た新しいビジネスのあり方として注目される。

(古川富雄)

 同社はレディスウェア「ジャスミンスピークス」「トレコード」、靴の「ファルファーレ」を主力に年間200回の期間限定店、全国10の直営店、EC、卸売りなどを手掛ける。緊急事態宣言後は売り上げがECだけ、仕入れ代金などは通常通りの支払いとなり、厳しい状況に陥った。沼部美由紀クロシェホールディングス代表は「会社の窓から見えた青空があまりに美しく、地球をきれいにするにはどうしたらいいか」と考えた。

沼部代表

わくわくして待ってもらう

 日本では毎年、供給された衣料品の約半分が売れ残り、最終的に廃棄、焼却される物も相当量ある。地球をきれいにするには、見込み生産による過剰生産→安売り→大量廃棄という業界の悪習を断ち切るしかないと決断した。5月中旬には全社員に目標と目的を発表、ホームページにも全容を掲載した。

 受注生産は全ての事業で基本とする。消費者には約1カ月待ってもらう。商品が届くまでの間は生産の情報を提供するなど工夫して、わくわくしてもらう時間にする。期間限定店も同様で、百貨店の担当者と話を進めており、既に賛同をもらったところもあるという。

 直営店はサイズや肌触りの確認などショールームと位置付け、ショールームとして必要のない立地の店舗は閉店する。卸売りは取引先で期間限定店を開くような形態として、消費者から受注し、1カ月後に納品する。24年までの受注生産の比率は21年春夏が10%、秋冬30%、22年春夏50%、秋冬60%、23年春夏70%を目標とする。

店舗に縛られないライブ配信で接客

 受注生産比率を上げるために三つの約束を掲げる。①材料やエネルギーを無駄にせず、在庫を減らし、廃棄による環境破壊を防ぐ②消費者には価格で還元する③賛同してくれる企業、職人やクリエイター、消費者と手を組み、新しい循環を作る――などだ。

 受注生産比率を上げるための取り組みは既に始めている。最も力を入れているのが、ライブ配信による販売で4月下旬から始めた。店舗や在庫に縛られない取り組みで、既に全ての販売員が経験した。15分間の配信で靴が20足売れたこともある。「ウィズコロナの時代はリアルでの接客はリスクがあり、画面を通した接客が正解」と位置付けた。

 最大の課題は「地球をきれいにする」目的をいかに消費者に伝え、共感を得るかということ。「インスタライブで300人ほどに1カ月待てるかと聞いたところ、80%が『待てます』と答えた。こつこつと啓蒙(けいもう)していくしかない」と考えている。

ウィズコロナを意識して始めたライブ配信

(繊研新聞本紙20年7月2日付)

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