「バレエで食べていけるようになりたいとの思いが始まりだった」。大阪と東京にある自社スタジオなどでバレエスクールを開き、バレエショップも運営するシェリ(大阪市)の代表を務める春田琴栄さん。3歳からバレエを始め、ずっと好きで続けてきた。
(藤本祥子)
やっぱり続けたい
アメリカにバレエ留学し、帰国後はアルバイトをしながらアシスタントとしてバレエの指導をしていた。続けているうちにバレエを仕事にするのは難しいと判断し、1年間フィットネス会社で働いたこともあった。だが、「やっぱりバレエがしたい」と独立を決める。個人でダンス教室や宝塚養成校、スポーツジムなどでバレエを教えていた。指導する日々をブログで発信していると「大人にも熱心に教えてくれるなら習いたい」との声が増えてきた。1年で200人の生徒が集まったという。14年に「春田琴栄バレエスクール」として運営を開始した。
バレエスクールを始めた時、衣装を理解したいとミシンを買って衣装作りにも取り組んだ。洋裁の先生と考案したウエスト部分に2種類のリボンをあしらった練習用スカート〝ダブルリボンスカート〟を着用していると、生徒から「買いたい」との声が増え、商品として販売するようになった。
悔しさをばねに
アメリカのバレエウェアブランドに、卸売りをしてもらえないかと直接連絡したこともあった。結局、他の日本企業と独占販売契約を結んだため、取引できなくて悔しい経験をした。「行動が遅かったり、現地に行って直接話したりしないとチャンスを逃すことを実感した」と春田さん。そこから、イタリアにあるバレエウェアブランドの会社を訪れたりもした。伊ブランドの「デラロミラノ」「ハーモニー」などとの取引がきっかけとなり、他の仕入れ先も徐々に決まってきてショップを持ちたいと思うようになった。
19年8月に、大阪でレディスのバレエウェアや用品が揃うセレクトショップのシェリを開いた。現在は大阪・心斎橋と東京・南青山に店舗がある。デラロミラノ、「バイプリエ」「ユミコ」「ボディール」「レペット」「ルビアウェア」「MDMシューズ」など20ブランド以上が揃う。取り扱いアイテムはレオタードやスカート、レッグウォーマー、シューズ、ピアスなど多岐にわたる。
オリジナルブランド「シェリ」も販売する。ダブルリボンスカート(税抜き7500円)や鉱物由来の機能素材「アドエルム」を使ったウエストベルト(6000円)、レオタードに貼り付けるブラパッドなど、春田さんが「あったらいいな」と思う物を開発した。
バレエショップの売り上げは、ECと店頭を合わせて年間1億円まで成長した。
同社はバレエをしている人を積極的に雇用し、バレエを続けていける環境づくりにも取り組んでいる。「ヨガのように、バレエがもっと盛り上がれば」と春田さんは話す。24年11月には「世界一受けたいバレエ教室ことえ先生」というユーチューブチャンネルを開設し、動画配信も始めた。