「シャネル」が毎年12月、傘下アトリエにオマージュを捧げる「メティエダール」が、厳格な衛生基準下、パリ北方に完成した「le19M」(ル・ディズヌフ・エム)で発表された。
ハットの「ミッシェル」や刺繍の「ルサージュ」のアトリエをシャネルと関係の深い著名人らと見学、そしてショーにつなげるという特別なプログラムで、サヴォワール・フェール(匠の技)の新拠点を祝った。
le19M内のギャラリーに開設されたランウェーに、都会的でコンテンポラリーな若い才能によるメティエダールの鼓動を伝えるシルエットが行き交う。オープニングを飾った深いスリットの入ったロングコートドレスやベストには、ヴィルジニー・ヴィアールがle19Mの建物の構造からインスピレーションを受けたグラフィカルな刺繍がのせられる。スパンコールやゴールドのリボン、カラービーズで描かれている。
ネックウォーマーやビュスティエ、バミューダパンツなどのアイテムが充実する。ロイヤルブルーやバイオレットのボリューミーなニットは、ツイードのアンサンブルやリラックス感のあるコートとのコーディネートでフェミニンに。足元は「マサロ」によるアイコニックなバイカラーシューズ。
袖がジャージーのツイードのブルゾンには、しなやかなロングスカートや光沢のあるパンツを組み合わせてエネルギッシュな女性を表現した。
le19Mはシャネルが「メティエダール」と呼ぶ8メゾンのアトリエを一つの場所(2万6000平方メートル)に集めたクリエイションの心臓ともいえる拠点。「19」は、住所であるパリ19区、そしてガブリエル・シャネルの誕生日、「M」は手(マン)、メティエ、モードを表す。建築家リュディ・リチオッティがデザインを手掛けた。ここでは約600人の職人が、複数のラグジュアリーメゾンのコレクションを制作する。22年に公式オープンする。
(パリ=松井孝予通信員)